2019年2月22日に開催したDIGITALIST主催イベント第4弾。前半のSlack Japan カントリーマネジャー佐々木聖治氏の基調講演に続き、後半はパネルディスカッションの形で、デジタル技術の進歩によって組織におけるコミュニケーションがどう進化するのかを議論した。登壇者は前半に引き続き佐々木聖治氏と、人工知能(AI)研究者である札幌市立大学理事長・学長の中島秀之氏、Sansan執行役員CTO(最高技術責任者)の藤倉成太氏である(以下、敬称略)。

コミュニケーションにおけるテクノロジーの役割

藤倉氏 自分はSansanという会社でCTOをやっていますが、エンジニアのメンバーのチーム作りや開発生産性の向上などにおいて、コミュニケーションはとても重要です。その観点から、今日の話題は興味深いなと思っています。


 まずは、「コミュニケーションにおけるテクノロジーの役割」から考えていきたいと思うのですが……電話が重要なコミュニケーションツールだった時代から、現代はだいぶ変化しましたよね。Slack Japanの佐々木さんが考える、コミュニケーションとテクノロジーの関係ってどのようなものでしょうか?


佐々木氏 「電話」というお話がありましたが、自分は新卒で入った会社で、最初の1~2年は各セクションからやってくるファックスを毎朝印刷して、役員室から社長室まで配っていましたね(笑)。現代は、テクノロジーがコミュニケーションのスピードをどんどん加速させていっていると思います。リアルタイム性もあり、おかげで業務もスピーディになっています。


藤倉氏 確かに、スピーディになってきてはいますね。でもそれによって、コミュニケーションに追われている、テクノロジーに使われている……という感覚を持っている人もいるのではないかと思うのですが。


佐々木氏 ツールを使ったコミュニケーションも、毎日だと当然ながら膨大な量になっていると思います。Slackの例でいえば、「チャンネル」というものがあるのですが、自分が参加するチャンネルを自分で決め、能動的にアクセスすることが重要だと考えています。メールだと開封して処理するだけで時間がかかってしまいますが、Slackは自分から能動的に仕事を仕掛けていくスタイルに変えていくきっかけになると思います。


中島氏 1990年代に日本でインターネットが使われるようになってから、急速に世の中が変わってきましたね。ただ、いろいろなアプリケーションに関していうと、あくまで「道具」であるという認識がとても重要だと思います。私の専門である人工知能(AI)に関しても、「道具」であるという認識が欠けている人が結構たくさんいます。だから「AIが人類を滅ぼすんじゃないか」なんて質問も受けることがあるのですが、AIはあくまで「道具」。道具が人間を滅ぼすわけがなくて、人間を滅ぼすのは道具を使っている人間です。自分たちが主体的に使っていくんだという認識があれば、そうおかしなことは起きないはずなんです。若い人の中には、LINEが来たらすぐ返信しないといけない! というようなプレッシャーを抱えている方もいるかもしれませんが、そういう感覚も見直していかないといけないですね。逆にいうと、LINEのようなツールは電話と違って、「リアルタイムでやりとりしなくてもいい・時差があってもいい」という部分に利点があるはずなんです。


藤倉氏 自分で能動的に仕事を取りに行く、主体的に道具を使う……という姿勢が重要であると。一方で、そういう姿勢が重要であることは頭では理解しつつ、やっぱり「道具に使われてしまう人」もいると思うんです。そういう人に対して、世の中はどうしていけばいいと思われますか?


中島氏 難しい問題だとは思いますが、一つは学校教育だと思います。友達と仲良くしなさいと先生は言いますが、友達なんて十数人いれば十分ですよね。LINEをすぐに返信しないといじめられてしまうとか、そういう問題は「全員と仲良くしなければならない」という意識から来てしまっている部分もあるのではないでしょうか。手段が目的化してしまっているところもあるでしょう。LINEはあくまでコミュニケーションの「手段」だ、という意識を育てたいですね。

写真左はSlack Japanのカントリーマネジャー、佐々木聖治氏。右はAI研究者である札幌市立大学理事長・学長の中島秀之氏

組織のサイズによる違いについて

藤倉氏 ここからは、より具体的に、今私たちが抱えている課題やその解決法について議論していきます。組織のサイズとコミュニケーションの課題について、お二人の知見をうかがえればと思います。


中島氏 SlackやSNSのデメリットは、そこでは「飲み会」ができないことです。「飲みニケーション」という言葉もありますが、日本では、大事なことが案外、飲み会で決まったりします。良いか悪いかはさて置き、実際そういうところがある。上司もSlackを見ているから大丈夫、というわけにはなかなかいかないんじゃないでしょうか。今のところ、やはりここはまだテクノロジーが解決できない部分なんじゃないかと思います。「組織のサイズ」が大きければ大きいほど、個別に飲みに行ったりする機会は必要なのではないでしょうか。


佐々木氏 そうですね。リアルなコミュニケーションは大切です。Slackの場合も、社内の働き方では、実はリアルなコミュニケーションも重視しています。各国にオフィスを構えて、それぞれのオフィスでは社員全員に1つずつスペースを与えています。きちんとコミュニケーションをとれる形にしているわけです。デジタルな世界とリアルな世界を融合させていくということになると思います。


藤倉氏 お話をうかがっていて思ったんですが、例えば小さな組織があったとします。働いている全員が視界に入るような、10人くらいの少人数の組織です。そういった組織においては、日常的にリアルな場でコミュニケーションを取りやすい。逆に、テクノロジーが寄与できることはほとんどないんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか?


佐々木氏 そうでもなく、役立つところはあると思いますよ。Slackには「bot」を入れる機能があるのですが、botが従業員をつなぐ役割を担うことができます。botに、「AさんとBさん、たまには一緒にコーヒーでも飲みに行ったら?」なんてお節介をやかせることができるんです。つながりのきっかけをテクノロジーに作らせる。そんなことも可能です。


中島氏 会話の履歴や、記録が残るのも非常に大きいですよね。


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