※ WWDC 2018でAppleは「iOS 12」の目玉機能として「ARKit 2」をアナウンスした。世界最大のARプラットホームとして、Appleはどんな舵取りを見せるのか(上記の写真)。

 Appleは昨年6月に開催した開発者向け会議「WWDC 2017」で、iPhoneを「世界最大の拡張現実(AR)プラットホーム」にすると宣言した。その後にリリースした「iOS 11」によって、開発者はアプリにARを手軽に、そして無償で取り込めるようになった。従来はARエンジンを自前で開発するか、他社製のライセンスを購入しなければならなかった。


 これによって、無料アプリでもAR機能を提供することが可能になり、ARアプリはより身近な存在になってきた。


 Facebookも5月1日に開催した開発者会議「F8 2018」で、仮想現実(VR)ヘッドマウントディスプレイ「Oculus Go」を発表した。製造を手がけるのは中国のXiaomi。現段階で十分な画質と性能を備えており、VR入門にはぴったりのデバイスだ。


 実際のところ、消費者のほうは、デジタルデバイスに相当興味を持っている人でも、日常的にAR・VRアプリを使っているとは思われない。一部のゲームを楽しむ際にこうした新しい表現が用いられているかもしれないが、日常生活の中で何が定着するのか、どんな形で生活を変えるのかは、まだ手探りの状態である。


 これに対してAppleは、ゲームや教育だけでなく、あらゆるジャンルでARの活用を奨めている。次期モバイル向けOS「iOS 12」では、目の前にあるものの長さや面積を測るアプリ「Measure」を新たに提供する。


 例えば、航空会社のアプリとMeasureを連携させて、ユーザーに機内持ち込み荷物のサイズをあらかじめチェックしてもらい、OKであれば航空券にチェック済みのサインを出す、などというアイデアはすぐに思いつく。私たちにはARとVRの体験が圧倒的に足りていないが、身近に適用できるアイデアにはすぐにたどり着けるのだ。

「空間の共有」が生む熱中

 Appleは今年6月の「WWDC 2018」で、AR開発キットの最新版「ARKit 2」を披露した。前バージョンとの主な違いは「顔追跡の精度向上」「空間の保存と呼び出し」「空間の共有」「3Dオブジェクトの認識」。それらの中でもプレゼンテーションで特に強調していたのが空間の共有だ。


 レゴブロックで作った建物のデモでは、3Dオブジェクトを認識させた上で、その周りに道路などのグラフィックスを敷き、車を走らせる様子を披露した。今までは1人のユーザーが1つのデバイス上で体験するのが常だったが、今回のデモではここに別の人が参加し、1つのAR空間に最大4人が参加できるようになっていた。


ARKit 2のウリは、1つのAR空間に複数人が参加できる共有体験だという。

 今まで1人プレイだったゲームが2人同時プレイになり、兄弟や友人同士で楽しめるようになった過去を思い浮かべれば、4人同時に同じ空間を共有できるAR体験によって、ユーザーはさらにARに熱中できることがわかるだろう。もちろん、参加者以外の人にはガランとしたテーブルや床が見えるだけで、なぜ盛り上がっているのかは分からないようになっている。


 現実とデジタル世界で同じものを見られるようになれば、空間や感情をより共有しやすくなるだろう。ARが「1人の楽しみ」から「みんなの楽しみ」へと変化していくのである。

ARコンテンツの制作環境を整備したアドビ

 空間の共有以上に重要な変化が「空間の保存と読み出し」だ。


 今までのARKitでは、アプリが起動されるたびに水平面や垂直面を認識し、空間に存在するオブジェクトを認識しなければならなかった。しかしARKit 2では、認識した空間を保存できるようになった。レゴブロックの例で言えば、途中で遊ぶのをやめて出かけても、帰ってきたら続きから遊べるようになる、というわけだ。


レゴのデモでは、目の前にあるブロックで作った建物と、その周辺にある道路などの合成を共有していた。また、作った街を一度保存して、後から読み込めるようになった点も新機能だ。

 また、認識した空間の情報をあらかじめ用意しておくことで、訪れた人が手軽に自分のiPhoneでAR体験を始められるようになる。例えばデジタルアートの展覧会で毎回同じ展示を見られるようにするアイデアや、複雑怪奇な東京の駅で通路に行き先の矢印を直接オーバーレイするようなナビゲーションを場所ごとに設置するといったアイデアも考えられる。


 こうした開発を実現するための環境整備に真っ先に手を挙げたのがAdobeである。Adobeは既に3D対応している「Photoshop CC」と、2017年に正式版をリリースした3Dグラフィックスソフトウェア「Dimension CC」、そして開発中の「Project Aero」で、ARコンテンツを制作する環境を整えた。特に入口となるのが著名なPhotoshopである点から、制作環境がいかに身近かが感じられるだろう。



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