すべてはあなたの“心”次第

 この社会はいま、自己責任地獄に向かって突っ走っているんだろうか?


 そう思うのは、過労死した会社員や、性犯罪被害にあった女性に対しての心ないバッシングを目にしたときだけではない。私の場合、大きな書店の自己啓発書コーナーを見ているときにも同じように考えてしまう。


 自由な人生、自分らしい生き方、ワクワクする働き方、お金の不安から解き放たれる思考。そんなキラキラした単語を掲げて、棚という棚から「あなたもこれがほしいでしょ!?」と訴えかけてくるきれいな本たち。彼らは私が本をひらくと、かなり高い確率でこう語りかけてくる。


「すべてはあなたの“心”次第です!」


 悩ましい人間関係も、不愉快な職場環境も、家族との軋轢も、将来への不安も、返しきれない借金も。何もかも自分の“心”で変えられるし、むしろ不幸の原因自体が自分の“心”にあるのだ……とのことだが、こうやって「何もかも自分のせい」だと考えることが本当に「自己」の「啓発」なのかしらん、という疑問はぬぐえない。


 先日は『借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ』(小池浩・サンマーク出版)という自己啓発書を買って読んでみたが(著者名に親近感を抱いたのだ)、やはりこのジャンルにおいては定番の、「現実は自分の心の投影。だから状況を好転させるには、自分をしっかりと肯定し、不安を取り除き、自分を含む宇宙の好循環を促すこと」という理論とノウハウを説く本だった。


 こうした内面の変化と願望実現とを強固にひもづけた理論は、よく「引き寄せの法則」という言葉で言い表される(「引き寄せ」と言わずに同じことを語っている本も多数ある)。これを正面から扱う本は、かつては「スピリチュアル」ジャンルの棚に置かれることが多かった。しかしこの数年、ビジネス系自己啓発書にもほぼ同様の内容を見ることが急激に増えてきたように思う。


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