(前編からのつづき)


 AIを、例えばリテール分野でのパーソナライズのように、ニーズなどを予測するマシンと捉えると、ビジネスへの有効な生かし方が見えてくる。そのインパクトは、コンピュータが普及したときよりも大きいと話すアジェイ・アグラワル氏。後編では、そのインパクトが生み出す格差、そして日本が本格化するAI時代にどう振る舞えばよいかを聞く。


教育に関わる質問です。“Prediction Machines”の中で、現状ではAIについて十分に学べる環境は一握りの大学にしか整っていない、AIを駆使できる人とできない人の格差が今後ますます広がることが懸念される、といったことを書かれていました。その状況は変わっていませんか。


Ajay:これについては、最初の質問のもう一つの答えにもなりそうですが、あの本を書いていたころに比べて教育の状況も大きく変化しています。この数年の間に、AI関連の技術について、信頼できる専門家から無料で学べる場がインターネット上に数多く開設されました。今では、国や地域、経済的な状況によらず、誰でも学ぼうと思えばAIについて学べる環境が生まれつつあります。


 ただ、一般に、社会に新しい技術が登場したとき、より大きな利益を享受するのは、高い教育を受けてきた人たちです。高度な教育を受けている層ほど、よりよく新しい技術を使いこなすと考えられるからです。コンピュータが社会に普及し始めたときもそうでしたが、AIの普及も、教育の格差と同時に経済格差を拡大する要因になり得ます。具体的に考えるには、今は時期尚早かもしれませんが、それは懸念すべき点であり、各国政府の対策が問われます。


日本は現在、AIの分野で存在感を示しているようには見えません。今後の日本のこの分野における世界的な位置付けはどうなっていくと思いますか。


Ajay:この5年ほど、AIの分野における中心的な課題は、AIを構築する基礎となる統計的モデルを開発することでした。その中では確かに日本は、世界をリードする立場にはありませんでした。しかし日本は今後5年ほどの間に、AIの分野で世界のリーダーになり得ると私は思っています。


 今後AIに関する中心的課題は、これまでに開発されたAIのモデルをいかに現実の事象に応用していくかという段階に移っていきます。その中で重要になるのは、AIをロボットなどのハードウエアと結びつけていくことです。その際、日本にはアドバンテージがあるはずです。理由は2点あります。


 1点目は、日本の社会は現状で既にアメリカやカナダに比べてもデジタル化が進んでいる上、ロボットなどのハードウエアは、元来、日本が得意とする分野だからです。


 そしてもう1点は、日本にはロボットという存在を受容する文化的な素地があるように見えることです。例えば日本人は、高齢者の介護にロボットが介入することを他の多くの国の人に比べて、抵抗なく受け入れるという報告があります。


「予測マシンの世紀――AIが駆動する新たな経済」の著者の一人、カナダのトロント大学ロットマン経営大学院教授であるアジェイ・アグラワル氏は、2019年3月15日、Sansanが主催するイベント「Sansan Innovation Project 2019」で講演します。AIがビジネスをどう変えていくのか、生で話を聞ける絶好の機会です。お見逃しなく。
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AIはコンピュータの普及以上のインパクトをもたらす

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