※ 人物写真は筆者撮影

 2019年5月4日、日本初の民間ロケットが誕生した。インターステラテクノロジズ(IST)が製造・開発した観測ロケット「MOMO3号機」を北海道大樹町から発射。宇宙と地球の境界線とされる高度100㎞を超え、113.4㎞に到達したのだ。同社はMOMOを「最初の一歩」とし、本命である超小型衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発にアクセルを踏むという。


 ISTは実業家の堀江貴文氏が創業・出資する企業として知られる。IST社長で物づくりの現場を率いるのは稲川貴大氏。2013年3月末、大学院卒業直前に堀江氏からロケット開発に誘われ、内定していたカメラメーカーを入社式当日に辞退。さらにISTに入社した翌年に社長に就任した人物だ。稲川社長にZEROの売りや、今後の開発について聞いた。

ZEROの売りはコストと地域性

MOMO3号機の打ち上げ成功おめでとうございます。稲川さんは2014年からISTの社長としてロケット開発を率いてこられました。社長就任時に描いた理想と現実を比べてどう思われますか?


稲川 もうちょっと早くMOMOの打ち上げを成功させ、本命である小型衛星打ち上げ用ロケット「ZERO」の開発ができていればと思う気持ちはあります。少し計画より遅れたものの、高度100㎞を超えるロケット打ち上げに成功し、ZEROにつながるロケットの実証実験はできた。いいチームができていると実感しています。


MOMOは高度約100㎞の宇宙に到達後、地球を周回せずに戻ってくる観測ロケット。一方、ZEROは超小型衛星を地球周回軌道に載せるロケットですね。なぜ、ZEROが本命なのか、改めて聞かせていただけますか?


稲川 半導体の進化などで衛星が小型化し、今後、超小型衛星打ち上げ市場が加速度的に伸びていくと思われるからです。米国の調査会社は、今後5年間に打ち上げを待つ超小型衛星(50㎏以下)が2000~2800機と予測しています。その一方で、超小型衛星を打ち上げ可能なロケットは年30本程度。ロケットが全く足りていないんです。


確かに、数千機の小型衛星を打ち上げ地球規模の高速インターネット網を構築しようという構想を米ワンウェブなど各社が出し、「メガ・コンステレーション」時代とも呼ばれます。そのマーケットに打って出ようと。ライバルは?


稲川 打ち上げに成功しているのは米ロケットラボの1社だけです。世界中で約100社のロケットベンチャーが超小型衛星のマーケットを狙って切磋琢磨していますが、構想だけのCGカンパニーも多く、実現可能なのは数社と見ています。我々は観測ロケットMOMOの打ち上げに成功し、ZEROの開発もスタートさせ、開発状況として大きく遅れてはいない。きちんと開発できれば、世界に負けないロケットを作ることができると思っています。


100㎏までの超小型衛星を高度約500㎞の軌道に載せるロケットZEROの構想図(提供:インターステラテクノロジズ)

ZEROの売りはなんでしょうか?


稲川 まずは「コスト」。ロケットラボの150㎏の衛星の打ち上げ費は約6億~7億円とされています。ZEROは5億円ぐらいで打ち上げたい。勝機は「地域性」です。米国以外の衛星メーカーが米国のロケットで打ち上げる場合、米国の国際武器取引規制であるITARなどの輸出入規制に引っかかるために、書類を出して米国の認証をとらないといけない。ロケットラボの発射場はニュージーランドにありますが、米国に登記している企業なので、米国に輸出するのと同様の手続きが必要になります。


なるほど。アジアや欧州などの衛星メーカーが、米国のロケットで打ち上げる際は煩雑な手続きが必要になるが、ZEROで打ち上げればそうした手続きなく打ち上げられる。それが地域性だと。米国の衛星がZEROで打ち上げるときは?


稲川 ITARの規制は輸入でも輸出でも適用されるので、米国の衛星が米国以外のロケットで打ち上げる時は、書類申請が必要になります。だから米国の衛星は米国のロケットで打ち上げたがる。もちろんコスト的に優位に立てば、ZEROで米国の衛星も打ち上げられると思います。でも我々の最初のターゲットは、アジアや欧州。コストや打ち上げ頻度が同じぐらいなら、面倒くさい書類はない方がいいですからね。

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ロケット開発の肝はエンジン、JAXAが技術協力

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