前編からのつづき)


 中国では、キャッシュレス化、ウォレットレス化が進み、銀行ATMでの現金引き出しなどを含む金融サービスが『アプリ時代』に向かっている。今回は、そのトレンドを伝える記事の第2回。


混沌とする交通カードレス化

 ここでは、支払いの場面として交通機関の利用時に目を向けてみよう。中国の省都クラスの都市においてはNFC(Near Field Communication)の交通カードが普及している。1、2年前までは多くの都市で、その都市専用の地下鉄用の交通カードとバス用交通カードが別々に用意されていた。不便ではあるが、それが市民にとって当たり前だった。


 これが近年では、同一都市で、地下鉄やバス、行政が用意したポート型シェアサイクルを利用できる「イーカートン」が登場している。並行して、中国全土のバスや地下鉄を利用できる「交通聯合(China T-union)」の交通カードも登場した。交通聯合は中国政府運輸部と各地の交通局が提携した交通カードシステムである。2015年に北京、天津、河北省でスタートしたのち、中国全土に拡大。2020年までには中国の大部分の交通システムが交通聯合システムにつながるとしている。


バスや地下鉄を利用する際に使う交通カードが普及している
左はバスのカードとQRコードの読み取り機。右は北京のアプリ「易通行」。

 特にバスを利用できる交通カードは、中国全土の都市で普及している。それにはいくつか理由がある。現金だけだと、車掌がいないバスの場合、利用額の小銭を用意しなければならず、あまりに不便なこと、交通カードを利用すると割引になるので消費者にとって得だからということ(割引率は都市によって異なる)といったものだ。高齢者向けにバス乗車が無料になる専用の交通カードがあるというのも理由の一つである。交通カードは、住民にとって大きなメリットがあった。


 都市限定のバスカードが普及したのちに、交通聯合カードやイーカートンが登場したが、これらは、それほど広がっていない。既存の交通カードと比較したメリットが、従来のバスに加え、新たに開通した地下鉄や、他都市の公共交通を利用できる(交通聯合)という点に限られるからだ。多くの市民は交換の必要性を感じていない状況といえる。


 このように交通カードが既に普及しているなか、さらにカード不要でスマートフォンでバスや地下鉄を利用するシステムの導入が各都市で進んでいる。Apple Payなどを利用したNFC対応のものも一部都市で導入されてはいるが、中国で売られるスマートフォンでNFCを内蔵した製品は多くないため、それほど普及していないように感じる。一方で、多くの都市のバスの料金箱や、自動改札機にはQRコードリーダーが設置されている。また、利用者が専用のアプリなどで表示させたQRコードをリーダーに読み取らせるシステムも各都市で導入されている。


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カードレスの実現方法は地域によって異なる

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