2018年12月、銀行ATMで顔認証と暗証番号を入力すれば現金が引き出せるサービスを、台湾の大手銀行である玉山銀行が始めた。採用した顔認証エンジンはNECの「NeoFace」。AI(人工知能)を活用した独自のなりすまし防止技術を備えており、「特徴点」と呼ぶ顔のポイントをとらえ、その動きを立体的に追うことで生体かどうかを検知する。登録者の写真や動画、シリコンマスクなどを用意しても、なりすましはできないという。


 銀行の利用者は、顔認証の初回利用時にキャッシュカードをATMに挿入し、ATMに搭載されたカメラで顔を撮影する。すると、ワンタイムパスワードが携帯電話に送信され、60秒以内にそのパスワードをATMに入力すれば顔登録は完了だ。その後は、キャッシュカードを持たなくても、顔認証と暗証番号の入力だけで現金を引き出せる。対応するATMは、台湾内5カ所に設置されている。


台湾・玉山銀行の顔認証ATM(画像提供:NEC)

 中国には顔認証で現金を引き出せるサービスが既に登場している(関連記事)。一方、日本の銀行ATMにおける生体認証は、キャッシュカードを挿入後、暗証番号を入力する代わりに手のひらや指の静脈認証が利用されている。顔認証では、SMBCコンシューマーファイナンスが自動契約機で本人確認を行う際、免許証の写真と契約者の顔を照合するために活用している。


 キャッシュカードレスのサービスとしては、スマートフォンの活用が増えている。例えばセブン銀行やじぶん銀行のサービスでは、ATMの画面に表示されたQRコードをスマートフォンのカメラで読み取ることで、現金の預け入れや引き出しができる。イオン銀行では、NFC(Near Field Communication)対応のスマートフォンをATMにかざせば、キャッシュカードがなくても取引できる。いずれも暗証番号の入力は必要だ。


 また各社のインターネットバンキングでは、ログイン時に生体認証を利用するスマートフォンアプリが増えた。FIDO Allianceが標準化を進めている生体認証の規格「FIDO」に準拠したものが主流で、スマートフォンの指紋認証機能や、光彩認証機能、顔認証機能などを使ってインターネット口座にログインする。


 日本の銀行ATMでも、キャッシュカードの代わりに顔認証を使う予定はないのだろうか。ある大手銀行の担当者は「現時点で導入予定はない」と明言した。


 導入に意欲的なのはセブン銀行である。2019年1月初旬、セブン銀行のATMで新規口座を開設する際、本人確認に顔認証技術を導入予定であると報道された。1月末には電通国際情報サービスと「オンライン本人確認」を活用したプラットフォーム事業の提供に向けて、合弁会社の設立を検討し始めたことを発表した。詳細は未定としたものの、2019年秋頃に導入を計画している新型ATMには、顔認証機能が実装される可能性がある。


 なおセブン銀行は、顔認証機能を口座開設にだけ利用するのではなく、「本人確認プラットフォーム」として広く応用することを検討している。一例として、セブンイレブンで民泊のチェックインを行えるサービスを提供する際、ATMの顔認証機能で本人確認する。特にコンビニエンスストアは多種多様なサービスを取り次いでいることもあり、こうした需要があると見込んでいるようだ。最近は多くの銀行が店舗の統廃合を進めており、他行ATMの減少に伴ってセブン銀行のATM利用者が増えることも予想される。このためセブン銀行は、今後もATMの多機能化を進めるとしている。


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