※ 上の写真はe-tron GT concept(左)とe-tronスポーツバック(出所:Audi)

 いま、自動車のデザインを語るとき、電動化と自動運転とコネクティビティは欠かせない要素になっている。それがよくわかったのが、アウディのデザインを統括するマルク・リヒテ氏にインタビューしたときのことだった。


マルク・リヒテ氏(出所:Audi)

「アウディ・デザインの新時代がここからスタートする」。リヒテ氏はそう語った。舞台は2019年のジュネーブ国際自動車ショー。アウディは新世代EV「e-tron(イートロン)」ファミリーを4台も並べたのである。


他のe-tronモデルとはプラットフォームが異なるスポーティなe-tron GT concept(出所:Audi)

「アウディにおける1970年代から80年代のデザインは角張った(エッジーな)ものでした。90年代になり、それがソフトでクールなデザインに変わり、2000年頃まで成功をもたらしました」


 1969年生まれのドイツ人リヒテ氏は、フォルクスワーゲン(VW)でデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた。VWではゴルフ第5世代(2003年)、第6世代(2008年)、第7世代(2012年発表の現行モデル)、パサート、トゥアレグ、それにアルテオンのエクステリアを手がけてきた。


 リヒテ氏は2014年2月から同グループのアウディに移籍し、いますべてのデザインを統括する立場にある。


 国際自動車ショーのプレスデイ初日、自動車メーカーとして最初の記者会見を開いたのはアウディだった。そのとき、これから発表する「e-tron」シリーズをずらりとお披露目し、会場を沸かせた。

「力強さ」のプロローグから「セクシーさ」のe-tronへ

 その興奮が冷めやらぬままにインタビューに臨んだところ、リヒテ氏は上記のようにこれまでの流れを整理してくれ、最後に「しかし」とつけ加えた。


「しかし、その後10年ぐらいそのままの流れできました。私が(2014年2月1日に)アウディに来て最初に着手したのが、新しいデザインの開発でした。具体的には、quattroを視覚化した精緻なデザインです」


 quattro(クワトロ)とは1980年いらいアウディが看板にしているフルタイム4WD技術であり、その技術を搭載したモデルのことを指す。リヒテ氏が言うquattroは、おそらく今のA6、A7、A8といった一連のモデルになるだろう。


 「精緻化」とはデザインの方向性を意味する。4つのタイヤを駆動し、エレガントでありながら、同時にスポーティであることを重要な要素とするのがアウディ車のスタイリングだ。そこに、ディレクターである氏の審美観に合った“quattroかくあるべし”という考えを明確に打ち出していくことを「精緻化」という言葉で表現したのだろう。


 リヒテ氏のテイストが明確にわかるのは、氏がアウディのデザイナーに着任した年の11月に開催されたロサンジェルス・オートショーで発表された「プロローグ」だ。


コンセプトモデル、アウディ・プロローグ(2014年)(出所:Audi)

 プロローグは、600馬力超を謳った高性能クロスオーバーのコンセプトモデルである。表面は滑らかに見える一方で、かつてリヒテ氏が使った表現によれば「筋肉」の存在を感じさせる力強さを持つ。今回改めてデザインのサイクルの話を聞くと、序章を意味する「プロローグ」がいかに象徴的な車名だったかに思い至る。


「その次の段階が、今回のe-tron GT conceptや、Q4 e-tron conceptです。言葉にすれば、よりソフトでセクシーなサーフィス(ボディ面)を持つデザインといえます。一方で、これまでの精緻さやシャープさは、いくぶん弱められています」


 とりわけ驚かされたのが、新しいフロントグリルだ。かつてのような輪郭のはっきりしたシングルフレームでなく、基本的には車体と同色である。Q4 e-tron conceptはグレーの差し色も入って、グリルが持つ役割が従来と明らかに異なっていることがわかる。


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