※ 上の写真は、ボルボXC90のクラッシュテストの様子。通常のクラッシュテストより5割ぐらい衝撃の大きい時速80キロでバリアに衝突しているところ(出所:Volvo cars)

 昨今おもしろいのは、クルマの発表会に”同席者”がいることだ。多くの場合、テックカンパニーである。2019年3月の、スウェーデン第2の都市イエテボリにおけるボルボカーズの場合も同様だった。


 ボルボはずっと安全第一のクルマづくりで知られてきた。最近でこそ、欧州の排ガス規制が厳しくなっている折から、EV(電気自動車)関連の話題が多いけれど、「乗員の生命を守るクルマづくり思想はずっと不変」だそうだ。


 そう語ってくれたのは、ボルボ・セイフティセンター担当のシニア・バイスプレジデント、ドクター・ロッタ・ヤコブソンである。


安全性に熱心に取り組むボルボ・セーフティセンターのドクター・ロッタ・ヤコブソン(出所:Volvo cars)

 ボルボの安全に対する姿勢は、創業者が掲げた理念の中に安全設計が入っていたほどで、とりわけ1950年代からは車体の安全性の研究に熱心に取り組んできた。最新の話題は、新車のボルボ車がからんだ交通事故で、死者あるいは深刻な損傷を受ける乗員の数をゼロにするという「ビジョン2020」なる取り組みである。


 2020年までに実効力を持たせるという「ビジョン2020」の取り組みは多くのメディアで評価されている。米「TIME」などは「ジーニアスカンパニー2018」でボルボを選んでいるほどだ。


 ジャーナリストを招いた記者発表会で、ボルボは時速80キロという「現実世界ではありえない」(ホーカン・サミュエルソンCEO)速度での、同社のSUV、XC90のクラッシュテストを披露してくれた。


ボルボカーズの社長兼CEOのホーカン・サミュエルソン氏が記者発表の場に立つ(出所:Volvo cars)

 クラッシュテストは、事故での衝突を再現する実験。ワイヤで引っ張られた車両が、アルミニウムの塊に衝突する。その際の車体の変型具合や、ダミーと呼ばれる人間型のテスターが受ける衝撃を研究して実車の開発に役立てる。


クラッシュテストには莫大な費用がかかるが、ボルボでは1モデルで70〜80回テストにかけるそうだ(出所:Volvo cars)

 この実験では、男性型ダミーに加え、女性型ダミーと3歳の幼児型ダミーを載せ、現実世界ではありえない速度(通常多くの衝突は時速30キロ程度で起こるそうだ)での衝撃を与えたことに注目してほしい、とサミュエルソンCEOは言った。


 「とりわけ重要なのは女性ダミーです」と前出のドクター・ヤコブソンは語る。


 「私たちは1950年代以降、イエテボリから100キロ圏内の交通事故調査を続けてきました。そこから分かったことは、女性など小柄な乗員の損傷度合のほうが、大柄の男性よりもシビアであることです。なぜかというと、これまでクラッシュダミー(テストで使われるダミー)が男性型だったせいでしょう」


手前(助手席)が「E.V.A. イニシアチブ」として万人に安全なクルマをと提唱するボルボが使用する女性型クラッシュダミー(出所:Volvo cars)

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