これまでの家電とは全く違う、未来の“カデン”を作ろう――。


 こんな取り組みがあります。取り組んでいるのは、パナソニックの新規事業創出プロジェクト「Game Changer Catapult」。白物家電やテレビといった「モノづくり」企業のイメージを払拭し、モノだけでなくサービスとしての広がりを持たせようとしています。


 開発・実証段階中のアイデアは、Game Changer CatapultのWebサイトから見ることができます。これを見ると、スマートフォンアプリなどデジタルを活用したサービスと、これまでに培われたモノづくりの技術とを融合させることで、サービスだけでもモノだけでも実現し得なかった新しい“カデン”を生み出そうとしていることがわかります。


 今回は、これらのアイデアのうち、食に関するものをいくつかご紹介します。

お金も技術もいらないおにぎり屋開業

 まず紹介するのは、おにぎり屋の開業支援パッケージを提供する「OniRobot(オニロボ)」というアイデア。


 今、欧米ではおにぎりがヘルシーフードとして人気を集めています。ベルリンには、おにぎり屋さんを50店舗展開しているチェーンが存在します。おにぎりの普及を目指して活動する「おにぎり協会」には、しばしば海外から「おにぎり屋を開きたいがどうしたらいいか?」といった問い合わせが来ているそうです。


 しかし、おにぎりをきれいに握るには意外とコツが要ります。おにぎりを作ろうとしたけれど、うまく三角形にまとまらず、不恰好なコメの塊ができてしまったという経験がある方は少なくないのではないでしょうか。また、おにぎり屋に限らず飲食店を開き、収益を出すのは容易なことではありません。


 そこで考案されたのが、おにぎりを握るロボットと注文用のアプリ、店舗運営に関するサービスをセットで提供するパッケージ、OniRobotです。注文を受けたら、店員はロボットにご飯を入れてボタンを押すだけ。ロボットがふっくらとしたおにぎりを作ってくれるので、店員が技術を習得する必要はありません。そればかりか、注文をとったり、会計したりといったオペレーションも全てアプリで済ませられるので、少人数で店舗を運営し人件費を抑えることができます。注文を受ける際には、具材やトッピングだけでなく、大きさや硬さ(握り加減)もカスタマイズできます。購入履歴からおすすめを提案する機能も持たせる予定だそうです。


カスタム注文画面では、好みの組み合わせでおにぎりを注文できる。
アプリ上で注文と決済を完了。店頭でQRコードを見せると、できたてのおにぎりを受け取れる。

 デザインモックは、遠目にはコーヒーメーカーか何かのようにしか見えません。おしゃれなカフェの片隅などに置かれていても違和感はなさそうです。小さな個人店やキッチンカーにも置ける大きさです。大型店舗や大手チェーンでは、より大型の産業用ロボットを導入する場所や資金があるかもしれませんが、個人オーナーが小さなお店を始めようと思ったときに、少ない初期投資で気軽におにぎり屋を始められるというイメージで作られています。


 実際に試作機で握りたてのおにぎりを作っていただきました。大きさや硬さ、米の種類(白米か玄米か)を選択し、ご飯と具材を入れると、一瞬にしてキュッと三角形に握られます。あまりにも簡単に握られてしまったので、本当においしいのだろうかと不安になりましたが、手に持ち、食べてみて驚きました。持っても崩れることなくしっかりと三角形を保っていますが、食べると、ふっくらとして口の中でほろりと崩れます。ほんの一瞬、出来上がりの寸法より一回り小さく握ることで、一度握られたご飯が反発して膨らみ、空気が入ってふっくらするのだそう。圧力のかけ方を自動制御することで、職人技のおにぎりが出来上がります。しっかりとクオリティの高いモノを作れるのは、やはり、これまで培った技術力・開発力の賜物だろうと感じる仕上がりでした。


枠の中にご飯と具を入れスイッチを押すだけで、一瞬にしてきれいな三角おにぎりが完成する。

 コンビニのおにぎりやスーパーの惣菜売り場などで売られている出来合いのものと違い、できたての温かい状態で食べられるのも魅力です。日本では、冷めた状態で食べるのはごく普通ですが、海外では温かい方が好まれるのだそうです。私も久しぶりに握りたてのおにぎりを食べて、できたてだと米粒が柔らかく、米の甘味や香りがあっておいしいなぁと思いました。


 また欧米では「機械が握っている」ことも魅力の一つになるそうです。人が手で握るのは不衛生という認識が強いためです。他にも、米国では白米よりも玄米の方が「クール」だと評価されたり、ヴィーガンフードとして受け入れられたりといった傾向もあります。国や地域によって嗜好や価値観が異なるので、その土地にあった展開が求められるわけです。OniRobotによって、おにぎりが一層欧米に普及すれば、かつての寿司とカリフォルニアロールのように、新たなおにぎり文化が育まれていくかもしれませんね。

ここから先は、DIGITALIST会員(登録無料)のみが閲覧することができます。

次ページ

ランチ難民を救うソリューション

会員の方は、ログインしてください。
会員でない方は、会員登録(無料)をお願いします。