※ 上の写真はジャガーのピュアEV「I-PACE」。7kWの普通充電では最長12.9時間でフル充電できる。

 少し前に米アリゾナ州フェニックス郊外のリゾートホテルに滞在したときのことだ。ちょっといいホテルではバレーパーキングといいって、玄関口に乗りつけたゲストのクルマをホテルの担当者があずかるサービスがある。私が見ていたら、スマートなスーツを着込んだアフリカ系アメリカ人が、真っ白いジャガーI-PACEで乗りつけてきた。


 さっと降りるとホテルの係に、あとはよろしく、という感じでクルマを預けてホテル内に消えていった。担当者は音もなくI-PACEを発進させると、玄関近くの最も目立つところにそのジャガーのピュアEV(電気自動車)を駐車した。少し前までフェラーリが駐めてあった場所だ。


 ホテルで、バレーが預かったクルマをどこに置くかは、家庭の調度品の扱いとちょっと似ている。日本家屋なら招待客に合わせて床の間の掛け軸を替え、欧州だとゲストルームの絨毯を敷き替え、といったように、ホテルのイメージと最も合うクルマを目立つところに駐めておく(ほかは駐車場にしまってしまう)。I-PACEは最もクールなクルマととらえられたということだ。


大排気量車と遜色のないドライブ感

 で、実際のI-PACEはどんなクルマか。デジタル化が進み、ガソリンやディーゼルの内燃機関を持ったクルマの運転および安全支援システムが充実するのと並行して、EVの技術も進んできた。各社からEVが登場してきているなかで、日本で乗れる最新のEVがI-PACEである。


 ジャガーI-PACE(アイペース)は、日本では2018年9月に発表され、ようやく2019年3月に試乗する機会を得た。開発は英国を中心に行われ、製造はオーストリアのマグナシュタイアが行う。


 ジャガーは(言わずと知れた)スポーツカーを出自とするメーカーだ。現在もモデルラインナップの核は、フロントエンジンに後輪駆動を組み合わせた「XJ」セダンと、スポーツモデル「Fタイプ」だ。つまりハンドリングといって、たとえばカーブを曲がるとき、いかに気持よく操縦できるかが重要である。


 東京と近郊で、I-PACEに乗ると、ジャガーの意図するところがわかった。最新の技術を盛り込んだEVといっても、リクツがついてくるわけではない。走り出して一瞬で”このクルマいいな”と思えたのだ。専用開発したシャシーのため理想的な設計ができた、というジャガーカーズの技術者の説明にも納得できる。


 I-PACEは前後に電気モーターを搭載し、車軸一体型で駆動する。出力はともに197kWだ。前後併せて696Nmというたいへん大きなトルクを持つだけあって、走り出しは大排気量の内燃機関搭載車をしのぐパワフルさを感じさせる。”いきなりパワフル”というのがEVの特長だ。


 ステアリングホイールと連動して車体が動く感覚は、従来からジャガー車のスポーティさを愛してきたファンを絶対に失望させないだろう。直進時の車線変更でも、カーブでも、車体はあまりロールせず、すっと素早く、気持よく動く。


 ジャガーの説明によると、バッテリーを床下に搭載したことで、例えばジャガーF-PACEより重心高が120ミリも低くなったそうだ。それがスポーツカーのような操舵感覚を生み出している。


 「ライバル車のなかには、内燃機関のモデルとシャシーを共用するものがあります。そうなるとどうしても(EVとして)理想的なパッケージにはならず、性能が落ちるのはやむを得ません。I-PACEは最初からピュアEVとして設計されたので、圧倒的な性能差が出るのです」


 かつて海の向こうの試乗会で出合ったジャガーカーズ本社の技術者が、こう話してくれたことがある。ハンドリングがいいのは、バッテリーを含めたパワートレインの搭載位置を理想的に設計できたおかげだろうし、結果、加速性能やブレーキ性能も恩恵を受けているのだ。


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