常に意識してしまうテーマは、クルマと信号の関係だ。特に筆者がそれを考えるのは、東京・世田谷の自宅から出張のために羽田空港に向かうときだ。距離は15キロほどなのだが、夜間でも1時間近くかかる。最大の理由は交通信号。発進すると次の信号が赤になる。延々その繰り返しである。


 都内のいくつかの幹線道路では、同様の現象が見られる。速度が上がるのを防ぐため故意にそう設定していると聞いた。一方で、(都市伝説のレベルかもしれないけれど)警察車両がパトロールに使う道路は、次々に信号が緑(青)に変わる設定になっているとか。


 クラウドコンピューティングを活用して、赤信号で止まることなく走れる技術をドイツのアウディが先ごろ発表した。クルマと交通信号を結びつける「トラフィックライト・インフォメーション」である。


交通量もパラメターに採用しながら、なるべく赤信号で止まらない運転を目指すのがアウディの「トラフィックライト・インフォメーション」だ。(出所:Audi AG)

 ドイツの市街地は「緑の波 Grune Welle」と呼ばれる速度と信号の関係には意識的だ。昨今では、環境問題に端を発するCO2抑制が話題になっているので、発進時に出る排ガス中の有害成分の濃度を抑制するため一定速度での走行の重要性が再認識されている。


 今回のアウディの新技術は、信号で止まらず走行できることを目的に、コネクティッド技術を用い、ドライバーに最適速度を伝えるものである。流れとしては、交通信号のローデータをアウディの管理センターへと流し、そこで処理したデータを車載のシステムへと送る。ドライバーが最終的に受け取るのは、交通信号が変わるまでの残り時間と、赤信号で止まらず走るための推奨速度という情報である。


「市街地のストップ&ゴーの繰り返しは苦痛です。緑の波にしても、必ずしも恩恵を受けられるわけではありません。今回のシステムでは、見えている赤信号があとどれぐらいで変わるかがわかるし、車両が理想的な速度を提示してくれるので、ドライバーはリラックスしていられると思うのです」


 アウディでは、アプリとコネクテッドサービスとスマートシティの開発を指揮するアンドレ・ハインツルマイアー氏の言葉を紹介している。このプロジェクトの責任者だ。


 欧州では、まずアウディが本社を構えるインゴルシュタット市の当局の協力を得て、2019年7月に実施に踏み切るそうだ。他の欧州都市でも2020年から同様のシステム導入を検討しているところがあるとアウディではリポートしている。


 実はアウディは、2017年に米国で先行して「タイム・トゥ・グリーン」と名づけたシステムを導入している。思い返すと、確かに2016年12月にニュースで読んだ記憶がある。早くから準備が行われていたのだ。


交通信号のデータを一元的にプロセッシングすることで緑の波が実現する。(出所:Audi AG)
「タイム・トゥ・グリーン」採用の交差点では、たとえば36秒待てば交通信号が緑に変わることが伝えられる。(出所:Audi AG)

 ロサンゼルス、ラスベガス、ヒューストン、デンバー、ポートランドといった都市で「タイム・トゥ・グリーン」は稼働している。これは信号が緑に変わるまでの時間をドライバーに伝えるものだ。


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その時点の交通量も加味して算出した「理想の速度」を提案

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