日本では梅雨が明け、夏が訪れた7月。後半になると学校も夏休みに入り、子どもたちにとっては1年で最も楽しいシーズンが訪れる。子どもが家にいる時間が増えると、親は仕事や家事が思うようにできなくなるものの、子どもにどんな体験をさせるかを考える楽しい季節でもある。


 そんな夏休みだからこそ考えてみたいのが「子どもとテクノロジーとの接触」だ。この議論は2018年のシリコンバレーにおける大きなトレンドにもなっており、世界的な関心を集める話題といえる。大手テック企業が重い腰を上げて取り組みを始めたばかりのホットトピックなのだ。


 もしあなたがこの問題の解決に心を砕いているのなら、世界最先端の「悩み」を共有していると考え直せばいい。


 そして、現在の議論はどうも「制限」をかける方向で進んでいる。しかし『DIGITALIST』の読者にとっては、「あまり建設的な議論ではない」と感じられるのではないだろうか。私たちはこの問題に対してどう取り組めばいいのか、考えてみたい。

Appleに突きつけられた「スマホ中毒」という問題

 テクノロジーの過度な利用は、スマートフォンに限った問題ではない。ゲーム機やパソコンといった他のデバイスもあるし、それらの用途もソーシャルメディアやオンライン動画、さらにはプログラミングまで様々だ。


 デジタルテクノロジーの使いすぎという問題は、いったい誰の責任なのか。この点については、各企業とも互いに明確にすることを避けてきた。しかし2018年1月、そうも言っていられなくなった企業が出てきた。Appleである。


 Appleは主要株主から「スマホ中毒を改善する取り組みを示せ」という公開書簡を突き付けられた。投資ファンドのJANA Partnersは、カリフォルニア教職員退職年金基金CalSTRSとともに、Appleがスマホ中毒対策に乗り出すべきであると要求したのだ。JANA Partnersは企業の社会的責任を果たすよう求めるアクティビストであり、CalSTRSは世界で11番目に大きい公的年金基金である。


 興味深いのは、この書簡に「Think Differently about Kids」というタイトルが付いている点だ。スティーブ・ジョブズ時代のAppleの著名なコピー「Think Different.」をもじったものだとすぐにわかるが、元のコピーが英文法的に間違っている点は日本でも有名な話だ。さすがに教員団体と組んでいるだけあって、今回のプロジェクト名は正しく訂正されたようである。


 さて、大株主からの要求であること、そしてAppleが重視している教育市場から上がった声であることを踏まえ、Appleは今年、スマホ中毒対策をiPhoneに盛り込む必要に迫られた。


 公開書簡が発表されたのは1月。年初の休暇明けでニュースが枯れていた時期であったことも相まって、テクノロジー系のメディアだけでなく、ビジネス誌や教育関連メディアでも大々的に報道されることとなった。こうして「スマホ中毒」は2018年のテック業界の主要トピックと化したのだ。

Google、Appleともに機能“は”出揃う

 株主から要望が上がったAppleよりも先に、Googleが先手を打ったのも面白い。2018年5月に開催した開発者会議「Google I/O 2018」で、同社は次期Android OS「Android P」を発表。そこにスマートフォンの利用動向を確認できるダッシュボードと、1日当たりの利用制限をアプリ単位でかけられる仕組みを取り入れた。


 2018年6月にはAppleが、9月配信予定のiOS 12で新機能「スクリーンタイム」を盛り込むことを明らかにした。これはAndroid Pと同じように、スマホの利用動向を毎週レポートし、使いすぎのアプリをリストアップして、必要であれば制限をかけられるようにする機能だ。


Appleが開催したWWDCでは、ソフトウエアエンジニアリング担当役員を務めるクレイグ・フェデリギが「iOS 12」の最新機能を説明した

 スクリーンタイムでは、アプリから届く通知の回数や、iPhoneを持ち上げた回数もカウントして表示する。アプリからの通知はiPhoneを手に取るきっかけを与えているとして、通知を制限してスマホを手に取らせないような工夫を施せるようにもなった。


 しかし、これだけでは大人にとってのスマホ中毒対策でしかない。本題はAppleがiOS 12に施した子ども向けの機能だ。


 子どもにiPhoneやiPadを持たせることで、親は自分のiPhoneから子どものiPhoneの利用動向を確認できるようになった。就寝する時には朝まで操作できないようにする「ダウンタイム」も設定できる。そのほかにも、プライバシーやセキュリティの管理、アプリの起動許可などを親がコントロールできる機能を用意した。