※上図はTwentieth Century Fox Filmの「Spies In Disguise」に登場する「アウディRSQ e-tron」(出所:Audi AG)


 デジタライゼーションとクルマというのは、最近はとみに相性がいいようだ。例えばマーケティング。“ブランドの刷り込み”という概念があって、将来クルマの免許を取得する子どもたちに、ブランドの存在をアピールする方策に、クルマのメーカーは心を砕いている。


 言葉は新しいかもしれないが、実はずっと昔から、同じことは起こっていた。私たちがさまざまな分野で特定のブランドを好きになるのは、子どもの頃の体験に端を発していることが多い。


 カメラ、テレビ、オーディオ、電子レンジ、ファッション、男ならヒゲのシェーバーも入るかもしれない。多くは購買の背景に、育った家庭で使われていて、両親のうちのどちらかが好きだったブランドを選択する、ということが多い。


 ブランドの刷り込みは14歳までに確立するという説を、かつて聞いたことがある。


 日本のメーカーで、そのことに早くから気づいていたのはソニーだった。いまの70代や80代にとってトランジスタラジオやテープレコーダーといえばソニー。50代や60代にとってオーディオやテレビといえばソニー。かつてはそれが定番だった。


 ソニーは1990年代、ウォークマンで“育った”世代に向け、保険を販売し、さらにクルマまで作ろうとした。ソニーを信じる人たちにとってライフスタイルブランドになろうとしたのだ(残念ながらほぼ過去形)。


 クルマでは、私たちは子どものときから、路上でブランドと車種をおぼえ、モデルカーを手に入れ、クルマの写真をプリントしたTシャツを買い、本を読んで自分の好きなクルマを決めてきた。そこでクルマのメーカーはイベントを開いては、販促物を配ったりするのだ。


 「今はTシャツで子どもを惹きつける時代ではないですよ」。ブガッティ・オートモビルのステファン・ヴィンケルマンCEOは、こう話す。


 時速400キロを超えるスーパーカーを手がけるこのブランドでも、次世代のユーザーを惹きつける必要は感じている。ただし、今やその手段はTシャツではなく「バーチャルゲーム」だということだった。


 ブガッティと同じフォルクスワーゲン・グループに属しているアウディは、ヴィンケルマンCEOの言葉を裏書きするようなアクティビティを展開している。このブランドは早くから映画やゲームに注目してきた。


 デジタルを通じてブランド力を高めようとするアウディの最新の例はハリウッド映画だ。米Twentieth Century Fox Film(20世紀フォックス映画)の「Spies In Disguise」(直訳すれば”変装したスパイたち”)に「RSQ e-tron」なるモデルを登場させているのだ。

レンダリングの段階の「RSQ e-tron」(出所:Audi AG)
「RSQ e-tron」はこんな感じで映画中に登場する(らしい)(出所:Audi AG)

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