平均寿命が延び高齢化が進む中で、個人にとっても社会全体にとっても、いかに健康であり続けるかが大きな課題となっています。特に大きな問題が、糖尿病、心臓病、脳卒中といった生活習慣病です。生活習慣病は完治が困難で、食事などの生活習慣によって予防することが肝要です。


 では、健康であり続けるためには、どのような食事を摂れば良いのでしょうか。一概に「バランスの良い食事を」と言われても、よく運動する人とあまり動かない人、痩せ型の人と太り気味の人では、ちょうど良い量や必要な栄養バランスは異なります。病院に通うほどではないけれど、血圧やコレステロール値など、健康診断の結果があまり良くない人にとっては、どうすれば数値が改善するのかも気になるところでしょう。


 「N式パーソナル食事摂取基準」は、そんなときに便利なアプリケーションです。個人の体質や健康状態に合わせて、栄養素の望ましい摂取量を算出してくれます(https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~jtaiman/)。名古屋大学の小田裕昭・生命農学研究科准教授が中心になって構築したもので、N式のNは名古屋(NAGOYA)から取っています。具体的にどのようなことができるのか、小田氏に聞きました。


N式パーソナル食事摂取基準とはどういうツールなのでしょうか?


 その質問に答える前に、「日本人の食事摂取基準」について話しましょう。これは、健康を維持するために必要な栄養の摂取量について「○歳の男性/女性には何がどれくらい必要か」ということをまとめたものです。厚生労働省が5年に1 度作成しています。栄養士や管理栄養士は、基本的にこれに沿って仕事をしていますし、学校給食や病院食などはこの基準にあうよう作られています。この基準は、専門家たちが大量の論文から得た科学的根拠に基づいて決めたものですから、ある意味、これに従った食事が「最も健康に良い食事」と捉えられます。


 ただ、人にはそれぞれ太りやすい・太りにくいなどの体質がありますし、健康状態や生活習慣によっても適切な食事内容は変わってきます。こうした個人の体質や状況に対応した食事摂取基準を算出できるようにしようと作成したのがN式パーソナル食事摂取基準です。


 画面左側の入力欄に情報を入力すると、右側に1日当たりの食事摂取基準が表示されます。左上の基本データ(性別、年齢、身長、体重、身体活動レベル)の部分は入力必須項目で、ここに入力すると「日本人の食事摂取基準」に沿った数値が表示されます。その下の、水色で塗られている部分に健康診断などの値を入力すると、個人に対応した数値が算出されます。

検査データや喫煙・飲酒習慣などを入力すると体質や健康状態にあった数値が算出される。

 例として図に示した栄養花子さんの場合、左側の欄を見るとLDLコレステロールの値が正常値を超えているため赤く表示され、血色色素量や空腹時血糖値、HbA1c(NGSP)、中性脂肪の値が正常値の範囲内ではあるものの問題とされる値に近いため黄色で表示されています。これらの値が、右側の欄に赤字で表示されている数値に影響しています。基本データだけを入れた図1と比べると、コレステロールは通常なら600mg未満であるところが300mg未満に、鉄は通常なら10.5mgであるところが17.0mgに変わっているのがわかりますね。


ここから先は、DIGITALIST会員(登録無料)のみが閲覧することができます。