吉田 寿
ビジネスコーチ(株) 常務取締役
企業にとって人は貴重で希少な財産。これは、よく聞くフレーズです。しかし、とりわけ多くの中小企業では、本業の成長や戦略展開には注力するものの、働く社員の処遇を決める人事制度の検討・整備は、後手に回っているところが多いのが実情です。
企業側の言い分としてよくあるのは、「うちの会社規模では、人事制度は必要ない」、「ルールに縛られるばかりで、臨機応変な経営判断の妨げになる」、「社長がちゃんと見ているから大丈夫だ」等々です。
しかし、社員の側からすると、「こんなに一生懸命働いているのに、会社はきちんと評価してくれているのか?」、「うちの会社の給与水準は、他と比べてどうなのだろう?」、「この会社にいて、これからの自分のキャリアはどうなる?」等々、疑問は尽きないのが現実です。
本連載コラムでは、これらの疑問にお答えすべく、特に中小企業にとってビジネスの成長を加速させる人事制度のエッセンスとは何かについて、人事制度改革でこれまで豊富な経験を持つ筆者が、これまでの豊富なコンサルティング経験をベースに具体的な事例も交えて解説します。
連載初回は、まず中小企業によくありがちな事例を中心に見ていきたいと思います。いわば、「人事制度あるある」です。
あなたの会社の人事制度は大丈夫?
例えば、あなたの会社で次のようなことは起こっていませんか?
- ①いい人材が採用できない
- ②いい社員が辞めてしまう
- ③社員の評価がうまくできない
- ④毎年、昇給・昇格に悩んでいる
- ⑤うつ病の社員が増えてきた
- ⑥ハラスメントで訴えられそうだ
- ⑦社員が労働組合を結成した etc.
そもそも自分の会社にきちんとした人事制度ができていない。どうすれば社員のやる気は上がるのか? この思いをどう社員に伝えればいいのだろう? 中小企業の経営者の方々は、いつもそんな思いにさいなまれているかもしれません。しかし、現象面で起きていることには、必ずその真因があります。実は、その多くは人事制度や人事処遇に関わることだということを、正しく再認識しておく必要があるでしょう。
それでは、会社でよく起きている「人事制度あるある事例」について、少し見ていきたいと思います。