目標管理制度や評価制度に基づいて、個人と組織のパフォーマンス向上を促進するマネジメントのことをパフォーマンスマネジメントと呼びます。パフォーマンスマネジメントは企業内のマネジメントプロセスの根幹であるにもかかわらず、ほとんどの日本企業においてうまく機能していないのが現実です。つまり、パフォーマンスマネジメントがパフォーマンスの向上に役立っていないのです。

 現在のパフォーマンスマネジメントの仕組みは、約20年前の成果主義導入のタイミングで一斉に構築されました。どの企業も似たような仕組みであるため、抱えている問題点も類似しています。20年前とは企業を取り巻く環境も大きく変化しており、今やイノベーションを生み出すマネジメントが求められていますが、現在の仕組みはむしろイノベーションの阻害要因となってしまっています。

 企業はパフォーマンスマネジメントのあり方を真剣に考えるべき時期に来ています。本連載ではこれからのパフォーマンスマネジメントがいかにあるべきかについて、順を追って考えていきたいと思います。

上意下達でイノベーションは起こらない

 企業における年間を通じたパフォーマンスマネジメントのプロセスは目標設定から始まります。その際、大半の企業では、全社の目標⇒部門の目標⇒チームの目標⇒個人の目標と、上から下に目標が配分されていきます。期末には、期初に立てた目標の達成度によって評価が行われます。

 このような方法によるパフォーマンスマネジメントは、むしろ「業績管理」と呼んだ方が正確かもしれません。企業である以上、必然的に行われるべきことという認識が染みついているようです。個人別の業績管理を徹底しなければ、会社全体の業績が低下してしまうという強迫観念が存在するようにも感じられます。

 けれども、イノベーションが企業の業績を左右する時代になると、こうしたやり方では効果が出ません。その理由を4つ挙げてみましょう。

●安全志向になる

 例えば営業担当者に与えられた目標が100であったとしましょう。多くの担当者はまず見込める数字を積み上げます。その結果、80までは何とかなると予想される場合、残り20をどうやって埋めようかと考えるでしょう。その際には、少しでも確実に結果を上げられる方法を考えるに違いありません。けれども、そのようなアプローチからは常識的なアイデアしか出てきません。

 不確実性の高い環境では、やってみなければ結果が分からないようなチャレンジを繰り返して学習することが重要なはずですが、目標の達成度で評価されることによって、むしろリスク回避的な行動が強化されてしまうのです。その結果、仮に与えられた目標が達成できたとしても、それを大幅に上回ることはほとんど期待できません。

●主体性が欠如する

 上から目標を与え続けると、メンバーは「目標とは与えられるものだ」という受け身の意識を強めてしまいます。それによって、自分で考えてゴールを設定するという経験が不足し、言われないことはやらなかったり、いつも判断を上に仰いだりすることが常態化してしまう恐れがあります。

 変化の激しい環境においては、現場で自律的な判断や行動ができなければ、変化のスピードに取り残されてしまいます。もはや上司が答えを知っている時代ではないため、主体性の欠如は企業の生存を左右する大問題といっても過言ではないでしょう。

●個人主義になる

 目標の達成度で個人を評価することによって、自分の目標達成が最優先の課題になります。その結果、他者あるいは他部門の仕事に対する関心が低下し、相互の協力関係が希薄化してしまいます。実に多くの企業において、隣のチームが何をやっているのか分からないといった状況が日常化してしまっているのです。

 イノベーションを生み出すために、個人や組織を超えたコラボレーションが不可欠ですが、個人の目標達成が優先される結果、コラボレーションに価値が見いだされなくなってしまっています。そのことによって、仕事の面白さや楽しさも損なわれてしまうのです。

●ネガティブ思考になる

 目標の達成度を管理する際、上司からのフィードバックは目標と実績のギャップに目が行きがちです。つまり、できていないことや改善点の指摘が多くを占めるため、フィードバックがいわば「ダメ出し」のオンパレードになってしまう恐れがあります。改善点を克服することが成長することといった認識を上司が持っていると、ますますダメ出しを続けてしまいます。

 その結果、部下のマインドは「頑張ってもできない」というネガティブ思考に支配されてしまいます。「どうせダメだから、ほどほどに頑張ろう」という意識が強化されてしまったらパフォーマンスが向上するわけがありません。