OKRによって個人の主体性を取り戻す

 目標とは上から与えるものという考え方を維持したままで、さらなるパフォーマンス向上は期待できないため、これからのパフォーマンスマネジメントでは目標設定の考え方が見直される必要があります。その際にヒントとなるのが、OKR(Objectives and Key Results)のコンセプトです。

 OKRは古くからインテルで活用され、グーグルで初期の頃から採用されている目標設定のフレームワークとして有名です。OKRそのものを用いるかどうかは別として、OKRのコンセプトはこれからの目標設定の参考になるでしょう。OKRにはいくつかの特徴がありますが、その一つが「ボトムアップ」です。

 会社という組織に属している以上、個人の目標はチームや会社全体の目標に貢献するものでなければならないことは言うまでもありません。けれども、そのためには目標を上から下に渡さなければならないわけではありません。一人ひとりが、「チームの目標達成に貢献するために、自分ならばこれをゴールにしたい」と、下から上の目標に突き刺すようなアプローチを取ることによって主体性が維持されるのです。

 ボトムアップの目標設定は、自分が「これをやりたい」という主体的な意志から出発します。さらにその目標が安全志向ではなく、「アンビシャス(野心的)」なものであれば、上から目標を与えるよりもはるかに大きな成果が期待されます。

 個人に目標を設定させたら、簡単に達成できそうな目標しか立てないのではないか、という懸念を抱く方も少なくないに違いありません。そのようなことを回避するために、OKRには以下の3つの特性が含まれています。

●オープンに公開する

 OKRでは個人の目標を周囲や全社に公開することが原則です。それによって、もし安易な目標を立てていたなら周囲にはすぐに分かってしまいます。そのことによって、互いに高い目標にチャレンジしようとする動機付けがなされるのです。

●トップ自身がチャレンジする

 トップ自身が高い目標にチャレンジする姿を見せることによって、組織全体にその影響が波及します。上司が意欲的な目標設定を行うことが、部下の高い目標を設定するための前提条件であることは言うまでもありません。

●達成度で評価しない

 目標が野心的であればあるほど、その達成は容易ではありません。簡単には達成できない目標を立てることを促すためには、達成度で評価を行うことは止めなければなりません。では、どのように評価を行うのかという疑問を持たれると思いますが、それについては本連載の別の回で解説したいと思います。

松丘 啓司(まつおか・けいじ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。2018年にパフォーマンスマネジメントに特化した株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任。主な著書として、『1on1マネジメント』『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。