ほとんどの企業では期ごとに個人目標が設定されています。けれども、それらの個人目標を周囲に(あるいは全社的に)公開している企業はごくわずかです。さらに目標の進捗状況までオープンにしている企業に至っては、皆無に近いのが実情です。

 ある調査研究によると、個人の目標と進捗状況を公開することによって目標の達成度が向上するという結果が分かっています。後述するように、目標を公開することによって様々なプラスの影響が生まれるからです。それにもかかわらず、個人目標が公開されないのはなぜなのでしょうか?

 個人の目標の進捗度は人事考課に密接に関連するため、公開すべき性格のものではないといった認識があるのかもしれません。あるいは、上司と部下との間で目標を個別に握っているため、オープンになると不都合が生じるケースも想定されます。しかし、個人目標を非公開にすることによるデメリットは、けっして無視できるものではないのです。まず、そのことについて説明しましょう。

目標の非公開は生産性を下げる

 個人目標がオープンにされないことの第1のデメリットは、他の誰がどこに向かって仕事をしているか分からない職場環境を作ってしまうことです。

 実際に多くの会社で、「隣のチームですら何が行われているのか分からない」という声を聞くことが少なくありません。おそらく他部署の業務内容を全く理解していないわけではないはずですが、目標が公開されていないと「今、重点的に何に取り組まれているのか」が分からないのです。

 誰が何をやっているのかが分からない状況では、連携のしようがありません。他の人に相談したり、逆にアドバイスをもらったりするような機会が生まれにくくなってしまいます。つまり、コラボレーションが促進されないのです。

 また、周囲の人たちの目標が分からないと、仕事の全体が理解できないなかで自分の目標を追うことなり、まさに「木を見て森を見ず」の状況に陥ってしまいます。その結果、高い視点で自分の仕事を捉えることができなくなって、視野が狭まってしまいます。

 個人目標がオープンにされないことの第2のデメリットは、仕事の楽しさが削がれることです。

 一人ひとりが自分の目標だけを見て仕事をする結果、仕事の範囲は狭い領域に閉じ込められてしまうことになります。組織の中で上下のコミュニケーションはあっても、横との関わりが希薄になるため、みんなで一緒に仕事に取り組んでいるという感覚が持てなくなってしまうのです。

 職場とは本来、仲間とともに過ごす場であるはずですが、極端なケースでは「朝に会社に来て、夕方に帰るまで誰とも一言も話さなかった」といった事例を耳にすることもあります。その結果、職場に楽しさを求めるのはもともと無理なので、収入を得るために割り切って働こうといった意識が強化されてしまいます。

 このように目標を非公開にしていると、コラボレーションが起こらず、視野が狭まり、仕事の楽しさも希薄化してしまうため、生産性の向上やイノベーションを抑圧してしまいかねないのです。