縦の動機付けから横の動機付けへ

 OKR(Objectives and Key Results)のコンセプトでは、目標をオープンにすることが原則です。それによって、生産性の向上やイノベーションの促進が図られるからです。

 本人の目標を上司(およびその上司)しか知らないという状況では、おのずと縦の関係が強化されます。上から目標が与えられて、その達成度で評価されるという環境においては、どうしても上を見て仕事をしてしまいます。上司の意向を強く気にする結果、待ちの姿勢、すなわち受け身の姿勢が強化されることになります。裏を返すと、自分で考えて行動するという主体性が弱められてしまうのです。

 また、上司による自分の評価がどうしても気になるので、周囲に気を配るよりも自分の成果を優先して考えるようになりがちです。そのことによって、他のメンバーや他のチームとの間に壁が作られ、いわゆる個人主義や組織のサイロが出来上がってしまうのです。

 組織の中において縦の動機付けが不要だというわけではありませんが、横の動機付けも必要です。個人目標の公開は、横の動機付けを強めるための打ち手といってもよいでしょう。

 目標と進捗状況がオープンになると、周囲から常に見られている環境に置かれるため、目標に対する個人の責任感やコミットメントが高められるという効果があります。また、本人も他のメンバーの状況を見ながら、「仲間もがんばっているから自分もがんばろう」という気持ちを持つことができます。

 チームの各メンバーがチーム全体の目標に向けて仕事をしている状況が目に見えるようになるため、チームに貢献することが重視される価値観が強化されるようになります。それが横の動機付けです。それによって、自分だけが成果を上げればよいのではなく、チームに貢献するために他者を支援するという行動が促されます。つまり、コラボレーションする職場が育まれていくのです。

 個人目標の公開は、やろうと思えばすぐにでもできる施策です。小さな打ち手ではありますが、その効果は絶大といえるでしょう。

松丘 啓司(まつおか・けいじ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。2018年にパフォーマンスマネジメントに特化した株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任。主な著書として、『1on1マネジメント』『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。