1on1を導入しようとすると、現場のマネジャーから次のような声が上げられることがよくあります。

 「1on1なんてやる意味があるのか?」

 「自分は部下と十分にコミュニケーションを取っているので1on1の必要はない」

 推進側の人事担当者が1on1の必要性を説明しても、なかなか理解してもらえません。もちろん、現場のマネジャーのすべてがそうではないので、1on1に消極的な人は後回しにして、積極的なマネジャーに手を挙げてもらって始める方法が取られることもよくあります。そのようなアプローチが間違っているわけではありませんが、そもそもマネジャーに理解してもらうべきことを取り違えているのです。1on1の必要性を理解させようとするから、理解されないのです。

1on1は手段であって目的ではない

 別の例をご紹介しましょう。先日、マネジャー向けのワークショップであげられた質問に対する私とのやり取りです。

相手:「部下に目標を考えさせるよりも、上から命じた方が早いのではないか?」

私:「確かに短期的にはそうでしょうね。でも、それを続けていると、部下の方々はますます受け身になりますよね。もし、あなたがけがで入院でもしたら、部下の方々は何をしたらよいか途方に暮れるのではないですか?」

相手:「そうかもしれないが……」

私:「理想的には、あなたが何も命じなくても、部下が自分で考えて成果をあげられるようになるのが、いちばん早いのではないでしょうか?」

相手:「それは理想だが、すぐには無理だ」

私:「もちろん、すぐにはできません。けれども、やり始めないとあなたの部下はますます待ちの姿勢を強めてしまいます。一度にすべて変えることはできなくても、この仕事はあなたに判断を任せますと、少しずつ自分で考えさせる範囲を広げていく必要があるのではないですか?」

相手:(うなずく)

私:「私たちは、部下が自律的に成果をあげる状態を目指すという、壮大なチャレンジをしているのです」

 このケースにおける目指す姿は、「部下が自律的に行動する状態」を実現することです。それによって、これまで以上に「成果をあげる=パフォーマンスを向上する」ことが目的です。1on1はあくまでもそれに至る手段なのです。非常に重要な手段ではありますが、目的ではありません。