日常の中でトレーニングしよう

 とはいえ経験頼みではなく何らかのトレーニングもしたいところだ。そこでプロジェクトやリスクのマネジメントを支援するプロジェクトプロの峯本展夫代表取締役が提案する「全体をとらえる」トレーニングを紹介する。

 峯本氏は近著『MQ マネジメント思考指数 「未来」を創り出す人の5つのアティテュード』でマネジメントに不可欠な思考を5つ挙げており筆頭が「全体をとらえる」であった。

 「全体をとらえる」トレーニングは同書に複数記載されており以下では知覚を鍛える二つを紹介する。「ある状況における重要な要素を知覚」するとカッツ氏が書いていた通り全体をとらえるには論理だけではなく知覚が欠かせない。

 トレーニングといっても個人が日常の中で取り組める。まず「本質を問う」トレーニングがある。例えば「なぜ笑うのか」「美しいと感じるのはなぜか」といったことを日頃から自分に問いかける。本質を問い続ける習慣を付け、無意識のうちに考えられるようにする狙いがある。

 本質を問う対象は何でもよいが興味を持てるテーマで、考えたりインターネットで検索したりしてもすぐに答えが出てこないものがよい。

 次に全体をとらえることについて「日記を付ける」トレーニングがある。業務を終える時、当日を振り返って気になった出来事の本質を考え、例えば「顧客からのクレーム処理で今日は終わってしまった。言われたことに対処したが大きな別の原因があって申し入れてきたのではなかったか」などとメモに書く。

 日記も継続が大事であり、毎日振り返ってメモをとり読み返すことで「全体をとらえる」思考を鍛えていけるという。

 冒頭で述べた、企業や団体の長の要望に応えられるのは「全体として見る」「全体をとらえる」人であり、言い換えれば大局観を持って行動できる人である。切望されている一方、育成は容易ではない。カッツ氏が指摘する経験と峯本氏が勧める日常のトレーニングを総動員する必要がある。

 なお、前回『AI失業はない』で書いたようにAIが人間を代替することはないが前々回で述べた『コンピュータを使うと人は衰える』という問題はある。人本来の強みである知覚を鍛え直し、衰えることなくAIやコンピュータを使いこなすようにしたい。

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谷島 宣之(やじま・のぶゆき) 日経BP 日経BP総研 上席研究員
谷島 宣之

 1985年電気通信大学情報数理工学科修士課程修了、日経マグロウヒル社(現・日経BP)入社、日経コンピュータ編集部に配属。日経ウォッチャーIBM版記者、日経ビズテック編集委員を経て、2007年から日経ビジネスオンライン、日経コンピュータ、ITproの編集委員。2009年1月から日経コンピュータ編集長。2011年6月から日経BPビジョナリー経営研究所研究員。2015年から現職。一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。著書に『ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国』(日経BP、2013)、『社長が知りたいIT 50の本当』(日経BP、2016)がある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。