(写真:123RF)

 「うーん、リスクマネジメントですか。その必要はないとまでは言いませんが心配性の日本企業が相手でしたらあまり強調しない方がいいでしょう」

 ある経営コンサルタントからこう言われた。聞いた時期は15年前、2004年だったはずだ。同年7月、MOT(マネジメント・オブ・テクノロジー)をテーマにした新雑誌の第1号を発行した。その準備をしていると時に冒頭の指摘を受けた。

 当時はMOTという言葉が取り沙汰されており新雑誌を開発するチームに筆者はいた。2003年からMOTとは何か、どういう取り組みをすればよいのか、そのための人材像や育成方法はどうあるべきか、といったことをまとめようと、経営者やコンサルタント、研究者、いろいろな方にお会いし、意見を伺った。

 手元にある第1号をめくると次のように書いていた。

 MOTとはテクノロジーをうまく使ってイノベーションを起こすこと。イノベーションとは新製品ないし新ビジネスの創出や既存ビジネスの改革であり技術革新ではない。イノベーションには自由な発想で新しいものを描く「デザイン」と、多彩な人材を生かしてデザインにそった成果物をきちんと作る「マネジメント」が必要で、その両立がMOTである。

 デザインの対象は事業戦略(ビジネスモデル)、商品戦略(コンセプト、ブランド)、技術戦略(ロードマップ)で、これらを実行するために組織・体制を整え、人材を用意し、コミュニケーションをとり、知的財産とリスクに注意する。

 片仮名が多くて恐縮だが上記のように整理し1枚の体系図を描くまでに1年近くかかった。図に明記するかどうか迷ったのがリスクマネジメントで、冒頭の意見を踏まえ、マネジメントと大きく書き、その対象の一つとして小さな字でリスクと表記した。

 日本企業にリスクマネジメントを強調しない方がよい理由を、コンサルタントは次のように説明した。

 「リスクをとってイノベーションに挑戦しようという時にリスクマネジメントを持ち出すと、問題を見つけることだけが得意な人が張り切り、かえってリスクをとれなくなる。手段の目的化という本末転倒が起きやすい」

 何かのプロジェクトを進める前に考えられるリスクを洗い出し、プロジェクトの事務局に提出する。プロジェクトが進み、忙しい最中に事務局から「あのリスクは顕在化していないか」などと定期的に聞かれたらうんざりする。それが見えているから当初の洗い出しはいい加減になり、リスクマネジメント自体が形骸化する。

リスクではなく前提に気を配ろう

 「リスクマネジメントは形骸化しやすく経営やプロジェクトのリスクをかえって高めます。リスクではなく、アサンプションをマネジメントしなければ失敗をなくせません」

 2018年の後半になってこう言われた。「必要はないとまでは言わないが強調は避ける」どころではなく「必要はない。害があるから」という意見である。

 筆者が所属する日経BP総研で『ビジネスを揺るがす100のリスク』という書籍を出版することになり、プロジェクトマネジメントに詳しい峯本展夫プロジェクトプロ代表と意見交換をしたところ、上記の指摘が出た。