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 「レベルセッティングを極力提案するようにしていますが必要だとなかなか分かっていただけません」

 ビジネスコンサルティング会社、インターブリッジグループ(ibg)の好川 一(よしかわ まこと)代表はこう語る。何らかの取り組みをする際、集まった人たちの考えていること、思っていることにずれがないかを確認、食い違いがひどい場合、調整する。これをレベルセッティングと呼ぶそうだ。

レベルセッティングとは何か

 初めて聞いたし、そもそも「レベル」は原稿で使わないようにしてきた言葉の一つである。なぜ使わなかったというと意味がよく分からなかったからだ。改めてウェブスターでlevelを引いてみた。水準器という意味が筆頭に出てきたが、a position in a scale or rank (as of achievement, significance, or value) fundedという説明も出ていた。

 何かの結果や価値が順に並んでいて、そこのどこに位置するかを示す、という意味だ。人の認識や思考も対象になる。思考の水準、思考の深さ、認識の度合い、と訳せばよいのだろうか。やはりレベルは使いたくないので、ここから先は「思考や認識の度合い」と書く。

 何かの取り組みに集まった人の「思考や認識の度合い」が揃っているかどうかを確認し、でこぼこが激しい場合、ある程度まで揃える。業務改善をするなら目的、対象、方法、成果の測り方などについて思考や認識の度合いを揃えておかないとうまくいかない。

 しかし、好川氏たちが思考や認識の度合いを揃えましょうと提案しても日本企業の経営幹部から「それには及ばない」「取り組みをすぐ始めてほしい」と言われてしまう。

 ibgは中国、米国、台湾に拠点を持ち、国際展開している日本企業を現地で支援してきた。どんな取り組みにも現地法人の社員や取引先、出向している日本人社員が参加するから思考や認識の度合いを確認しなければならない。

 様々な国籍の多様な人が関わるから、と説明すれば現地にいる出向者は理解してくれることが多いそうだが、日本ではなかなか難しい。具体的なやり方はいろいろだが例えば当事者を集め、今回の活動について期待していること、心配していることをお互いが話し合う会議を設けたりする。ところが会議の趣旨を説明すると、現場の当事者からでさえ「なぜわざわざそんなことをするのか」と首をひねられてしまいがちだ。

 同じ日本人で同じ会社の社員、お互い何を考えているか分かっている。こう言われることが多いが実態は違う、と好川氏は指摘する。しばらく活動を進めていくと実態が見えてくる。活動目的の理解が人によって異なっていた。「在庫」や「顧客」といった基本用語の意味が部門によってずれていた。いずれの場合もやり直しになりそれまでの活動が無駄になる。

 思考や認識の度合いが食い違うのはなぜか。思考や認識の度合いは主に経験に左右されるから人によって違ってくる。同じ会社の社員であっても所属先、上司、担当顧客によって差が出てくる。例えばある工場と別の工場で「納期」の考え方が違うことは珍しくない。そもそも人間一人ひとりの考え方は色々あるわけで日本人社員同士だから話が通じると思うこと自体、本来おかしい。