思考の訓練が必要

 こう見てくると何かの活動に際して参加者の思考や認識の度合いを確認し、調整することは欠かせない。責任者が目的や用語をきちんと定義し、担当者に説明、さらに意見交換の場を設ければ度合いを揃えられる。

 理想を言えばより根本的な対策も必要である。全社員が思考や認識の度合いには差があると知り、相手とずれがあったら調整するやり方を身に付けておく。それには思考の訓練が求められ、育成や研修の課題になる。

 例えば「目的」といっても個人の目的、所属する部や課の目的、事業本部の目的、全社の目的、産業界の目的、日本の目的、世界の目的といった「度合い」がある。産業界の目的のために始める活動を、部や課の目的としてとらえてしまうと前述のようにある程度進めたところでおかしくなる。

 思考や認識の度合いを自分で上げたり下げたりするには日頃からそれを意識し、頭をそのように使ってみることだ。製造業でしばしば見聞きする「なぜなぜ分析(なぜを5回繰り返して問題の本質を探る)」取り組みはその一例と言える。

 多様性が重視される時代であり、思考や認識の度合いは様々であって本来さしつかえない。ただし、そうした人たちが共同で一つの仕事に取り組み、成果を挙げていくためにいくつかの重要な事項について思考や認識の度合いを調整しようということである。

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谷島 宣之(やじま・のぶゆき) 日経BP 総合研究所 上席研究員
谷島 宣之

 1985年電気通信大学情報数理工学科修士課程修了、日経マグロウヒル社(現・日経BP)入社、日経コンピュータ編集部に配属。日経ウォッチャーIBM版記者、日経ビズテック編集委員を経て、2007年から日経ビジネスオンライン、日経コンピュータ、ITproの編集委員。2009年1月から日経コンピュータ編集長。2011年6月から日経BPビジョナリー経営研究所研究員。2015年から現職。一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。著書に『ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国』(日経BP、2013)、『社長が知りたいIT 50の本当』(日経BP、2016)がある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。