(写真:123RF)

 「日本企業の中でレベルが合っていない言葉の一つにキャリアがある。キャリアと聞いて、係長から課長、次は部長と職位を上がっていくことばかり思い浮かべる人が案外多いのでは」

 ビジネスコンサルティング会社、インターブリッジグループ(ibg)のコンサルタント、大西隆仁氏からこう言われた。

 前回の本欄で「レベルセッティング」について紹介した。「何らかの取り組みをする際、集まった人たちの考えていること、思っていることにずれがないかを確認、食い違いがひどい場合、調整する」ことを指す。

 「日本のように新卒から定年退職まで同じ一社に勤め続ける仕組みの中にいると『キャリアは社内の出世街道』と受け止める人が多くなるのではないか」(大西氏)。

 全員そう受け止めているならとりあえずレベルは揃っていることになるが、少なくともキャリア形成支援を掲げている人事部門は違うはずだ。色々なことを勉強し、改革しようと思っている人事部門が支援するキャリア形成は出世の後押しではないだろう。

17年前に厚労省が提言したこと

 キャリアやキャリア形成という言葉が気になり調べてみると、17年前の2002年7月、厚生労働省職業能力開発局が『「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書』を発表していたことに気付いた。

 報告書には次のようなことが書かれていた。

●「キャリア」とは一般に「経歴」、「経験」、「発展」、「関連した職務の連鎖」と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念である。

●「キャリア形成」とは上記「キャリア」の概念を前提として個人が職業能力を作り上げていくこと。

●「キャリア形成」は個人の側から観ると動機、価値観、能力を自ら問いながら職業を通して自己実現を図っていくプロセスとして考えられる。

 つまりキャリアあるいはキャリア形成といった場合、職務の連鎖であり、職業能力を作り上げながら、個人の価値観を問うことまで含む。したがってキャリア形成を唱える人事部門は職業能力のトレーニングに加え、社員一人ひとりが仕事に対する価値観を問い続けることを後押ししようとしているはずである。