2000年、私は40歳の時にIT業界から人材業界に転身しました。そして3年後に、組織における人間力リーダーの育成を目的とした「モチベ―ション・リーダーシップ(別名モチベーション・マネージメント)」という2日間の管理職研修を完成させ、これをベースに年間200日ほど、講演や研修を続けています。今年度も同じです。企業はもちろん、銀行、地方公共団体などで登壇してきました。なかには、10年以上このコースをやり続けているところもあります。そして驚くことに、ここ数年、新たにこの研修をやりたいという企業や組織が増えています。大企業だけでなく、中小企業、労働組合などからもリクエストがきます。まさに、今、多くの企業が「人間力リーダー」を必要としています。言い換えれば、すべての経営者、管理職、リーダーたちが人間力リーダーになることを求められているのです。

 この新連載では、「人間力リーダー」というテーマで、私の企業研修における経験、また現在進行形で取り組んでいる様々な企業での講演や研修時に、気づいたこと、驚き、発見を、読者のみなさんと共有しながら「人間力リーダー」について、掘り下げていきたいと思っています。

管理職は「権威の象徴」ではなくなった

 私が人材業界に転身する2000年までは、昭和の高度成長を引きずっている時代でした。

 男性が働き続け、女性が結婚や出産を期に家庭に入るのが当たり前、男性中心の軍隊型組織でピラミッド構造でした。私は1982年から働いていますが、最初に入社した自動車会社、30代で働いた航空会社は、まさに「ザ・昭和な組織」だったなと思い出します。

 当時、企業の業績は安定しており、終身雇用を前提とした年功序列が当たり前でした。なにしろ、男性は滅私奉公で頑張れば、年齢とともに給料もポジションも上がり、55歳の定年退職時には、誰もが部長職以上で終わることができました。その後は、退職金と年金で悠々自適な老後に突入という人生が約束されていました。

 男性は生涯、一企業で働く人がほとんどだったため、管理職に就くことは長年真面目に働いた結果の「ご褒美」であり、「権威の象徴」でした。軍隊型組織で兵隊として滅私奉公してきたのだから、隊長になったら兵隊をこき使い、自分は椅子でふんぞり返っている。そんな部長を、私は何人も見てきました。「若い時から上司に言われた通り、何も考えずに仕事最優先で頑張ってきたんだから、今の状態は当たり前。お前たちも20年頑張れば楽できるよ」なんて言う管理職もいました。

 当時の管理職は楽でした。部下は文句を言わない滅私奉公の兵隊で、しかも年下ばかりです。女性はいても少数でした。兵隊の男性が総合職であったのに対して、女性は一般職採用が多く「女性は職場の花」的な扱いをされていたため、部下として認識する必要もありませんでした。

多様な部下を育てて生かすのがイクボス!

 今は、どうでしょうか?

 企業が、10年後20年後も自社の成長を約束できる時代ではなくなりました。右肩上がりの高度成長は望めず、男性と女性の給料も処遇も同じになりました。また、男性一人の給料で家庭を持ち子供を育て上げるのは厳しく、男性も女性も同様に、結婚しても、子供ができても働き続けることが当たり前になりました。社内はワーキングマザーとイクメンだらけです。

 また55歳の定年は60歳に伸び、65歳、そして70歳まで働き続けなければ、年金もあてにできない時代になりました。かつては女性だけが背負ってきた親の介護も、今や男性も当たり前に背負い、それを背負いながらも全員が働き続けることを求められています。

 もはや滅私奉公の兵隊的な働き方ができる人などいません。必然的に、軍隊型組織ではうまくはいきません。ダイバーシティ(人材と働き方の多様性)&インクルージョン(包括し、まとめあげていく)な組織にならざるを得なくなりました。企業や組織で働く人たちは、自分の人生を背負いながらも、ワークライフバランスをとりながらいきいきと働き続けたいと願っています。そういう人たちをリードしマネジメントする管理職のあり方は大きく変わりました。