これから必要とされる管理職は「軍隊の隊長」といった権威の象徴ではなく、組織と人を育て生かすことを担う役割「イクボス」です。だからこそ、今、管理職の「人間力」が求められているのです。

「人間力」とは何か?

 こうして、「人間力」が重要だということが多くの企業で認識されてきました。私は「働き方改革時代に求められる人間力リーダーとは」といった講演を、ほぼ15年続けています。私は、このような講演のスタートに必ず、以下の質問をして挙手してもらいます。

質問1 あなたの会社に「人間力」のあるリーダーは多いですか?

①多い ②少ない ③半分くらい

質問2 あなた自身の人間力はありますか?

①ある ②ない ③分からない

質問3 かつて人間力のあるリーダー(上司、先輩)に出会ってきましたか?
①3人以上出会った ②1~2人出会った ③出会っていない

 多くの講演で質問1の会社の人間力リーダーは、「②少ない」で手が挙がります。また質問2の自分の人間力では「③分からない」と答える人が非常に多い。そして最後の質問、人間力リーダーに出会ってきたかどうかに関しては「①3人以上出会った ②1~2人出会った」で、ほとんどの人が手を挙げます。

 企業には人間力リーダーは少ないものの、誰もが必ず出会う機会を持っているのです。しかし、自分自身の人間力については、あるのかどうなのかあまり分かっていない。一体、人間力とは何なのだろうか? 多くの人が漠然としか捉えられていない「人間力」という言葉を、私なりに定義しています。人間力とは生まれながらのものではなく、後天的に培われて磨かれていくもの。単語を分解してみると分かりやすくなります。

 人間力 ⇒ 「人」の「間」の力。

 つまり社会性、対人関係において発揮されるもので、「心を使う力」「心配り」です。心の知性といわれるEQ( Emotional Intelligence Quotient)です。

 私たちは誰しも「心」を持っています。喜怒哀楽は、私たちの心の働きです。人間力とは、この「心」を使う力です。ですから、人間力が無い人はいません。「心」が動かない人間はいないはずです。

 しかし、この「心」をうまく使えているかどうか? プライベートで家族や友人に対して使えている人は多いはずです。現代では、それを会社生活、社会生活においてしっかり使えているかどうかが求められています。

 かつて、管理職が「軍隊の隊長」だった頃は、企業で「人間力=心を使う力」は求められていませんでした。必要なかった。なぜなら、自分の心に蓋をして、頭を使ったテクニックとスキルで、兵隊を動かせばよかったからです。だから管理職も「人間力」を必要としなかった。逆に、軍隊に感情を持ち込んではいけなかった。しかし今、企業や組織の中で兵隊の意識を持って働いている人は誰一人いません。皆、いきいきと働き、生きることを望んでいます。