以前、銀行の支店長研修で、やはり直前に業務都合でのキャンセルが数名出たことがありました。その時の人事部長がなげいていました。

 「彼らこそ、参加してほしかった。まさに軍隊の隊長、『俺流』でやっていて、部下が疲弊して潰れていっている。しかし、彼らは業績を上げているので、部下が辞めていくのを部下の弱さのせいにして、自分に非があると思っていない。彼らこそ『人間力』の必要性に気づき、モチベーション・リーダーになることを学んでほしかった」

 女性活躍推進やダイバーシティ推進の講演や研修当日にキャンセルする男性経営陣、男性管理職はどの会社にもいます。後で担当者に聞くと、異口同音で「あの人こそ、この講演を聴いて気づいてほしかった」と言われます。つまり、そのような人ほど、人間力がなく、そのことに気づいていない困った人であることが分かります。その年齢は45歳~50代です。

 また、講演や研修に参加していても、「あなたには人間力がありますか?」という問いに、当たり前だと言わんばかりに、手を挙げる数名の男性管理職がいます。後で担当者に聞くと、同じようにそんな人ほど、人間力を持ち合わせていないのです。

 なぜ、これほど45歳以上の男性が人間力のことを理解していなかったり、人間力がなかったりするのでしょうか? それには理由があります。

昭和の管理職は頭とテクニック、左脳の訓練ばかりだった!

 ある銀行の研修で、「イキイキ笑顔で仕事をするのが重要です」と話したところ、

 「それは、無理です。若い時から、仕事中は歯を見せるな。真面目に真剣にやれと言われて、笑うことが許されなかったから、今さら仕事中に笑顔なんてできません」

 と答えた銀行の支店長がいました。まさに、訓練された兵隊がそのまま隊長になった姿です。

 私自身、20~30代に働いた自動車会社や飛行機会社で行われていた管理職研修はスキルや知識の研修がほとんどでした。冷静に頭で考えて、論理的に物事を処理する能力、左脳にフォーカスした研修がたくさん行われていました。それこそ、1980年代前半には『地獄の特訓』という名の訓練もありました。

 ビジネスという戦いの場では、リーダーは心に蓋をし、まさに心を殺して、いつも冷静に考え正しい判断をしていくことだけが求められていたからです。または力によって、部下や相手を圧倒し引っ張っていく強さだけが求められていました。心を使う、つまり右脳に関する研修はほとんどありませんでした。その結果、いつの間にか、会社では喜怒哀楽を出してはいけない。心の内は見せないといったポーカーフェイスな男性が増えていきました。

 現在、部長以上のポジションに着いている管理職、経営陣の方々は同じような訓練を受けてキャリアを上り詰めている人たちです。つまり、会社では心はいらない、人間力など必要ないと教え込まれて今に至ってしまっています。