「 2)管理型リーダーシップ」で管理できるのは仕事だけ

 「定期的に報告、連絡、相談を欠かさずに、仕事を進めてください」

 これは、いわゆる「ホウレンソウ(報連相)リーダーシップ」で、「報告」「連絡」「相談」をすることをメンバーに促して仕事を管理するリーダーシップです。「管理職」という言葉が示す通り、これを自分の役割として一生懸命やっているリーダーも多いと思います。強制型リーダーシップと異なり、このリーダーシップは日常の仕事の場面で使うことで大きなマイナスの影響があるわけではありません。ただし、このリーダーシップだけでメンバーと会話をしていると、とても事務的なコミュニケーションになります。また、新しいアイデアを募る場面などでは、メンバーたちの発想を狭めてしまい、全く効果はありません。

 このリーダーシップが有効な場面の1つは、人材教育です。新人や、未経験者を教育する時にこのリーダーシップを使えば、メンバーは自分がどのように学んでいくか道筋が分かるし、リーダーにとってはメンバーがどこまで理解してきたかが分かります。運用、メンテナンスなどの定例業務を行う時には、このリーダーシップを発揮することにより、均質的で安定したサービスの提供とクオリティ維持に繋がります。

 一方で、このリーダーシップだけでは、リーダーは仕事の状況把握と問題解決にばかり意識が向く傾向があり、メンバーの気持ちを忘れがちになります。ですから、後で説明する「5)関係重視型リーダーシップ」「6)民主型リーダーシップ」と併用して使うことが望ましい形です。この「合わせ技」で使うのが、前回例えたゴルフクラブや包丁などとの大きな違いです。ゴルフクラブや包丁は、1つの場面で使うのは1本だけです。しかし、リーダーシップは場面によっては、1つだけを使っているのでは足りません。

 昭和の時代、この「管理型リーダーシップ」も日常的に非常に使われていました。なぜなら、軍隊型組織において、兵隊が整然とやるべき役割を果たし、一致団結して結果を出していくには管理することはとても重要だからです。だから昭和のリーダーたちは、管理型ですべてを遂行できると思いこんでいる人が多い。管理できるのは仕事だけで、人ではありません。兵隊は心を殺して、ロボットのように働くので管理はできます。しかし、今の時代は兵隊のように働いている人はいません。「心」があります。人の「心」を管理することはできません。管理型リーダーシップだけでは足りない、併用しないと通用しないということを忘れないでください。

 今回の2つのリーダーシップは、昭和の軍隊型組織で最も重要視されていたものです。かつては、これらのリーダーシップを振りかざすだけで、組織と人が動き、業績を上げることができました。しかし、ダイバーシティ&インクルージョンな組織では、これでは足りません。次回では、同様に昭和の時代は花形だったけれど出番が減っている「3)ペースセッター型リーダーシップ」と、リーダーシップを大きく変えた「4)ビジョン型リーダーシップ」の2つについて説明します。

植田 寿乃(うえだ・ひさの) キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント
植田 寿乃

 IT業界の人材育成を目的に有限会社キューを設立。その後、人材開発業界に転身。「モチベーション・リーダーシップ」「経営陣、管理職の人間力アップ」「女性と組織の活性化」「メンター育成」に取り組み、各種オリジナルカリキュラムを開発し、研修・講演を実施。著書に『「女性を活かす」会社の法則』『キャリアセレブになる36の秘訣』『30歳からの幸せなキャリアの見つけ方』など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。