類似商品というのはある日、前触れもなく登場します。そして後から出てくる類似商品は通常、競合商品を研究してあるので、皆さんの会社の先行商品より優れているケースも多いでしょう。あるいは、相手が巨大企業で、彼らに簡単につぶされそうになるかもしれません。

 それは2年前にまさに我がM社が経験したことです。皆さんの会社に明日、大きな脅威が突如現れたら、すぐに戦い、勝ち抜ける体制は整っているでしょうか。

 それまでM社は、大豆製品メーカーとして、新商品を1カ月に1つのペースでどんどん開発して勢いに乗っていました。なかでも、5年前に地場産業の焼き物メーカーと共同で開発した、卓上でたった10分で自家製豆腐が簡単にできる、「10分豆腐」という焼き物製蒸し器と豆乳とにがりのセットを開発販売し、飲食サービス業界でも一般家庭でも人気を博していました。テレビからの取材も多く受けるようになってきた矢先のことです。

 ある食品展示会にブース出展していたところ、国内最大手N社の開発部長、N氏が当社のブースを訪ねました。ダブルボタンのダークスーツにオレンジのネクタイ、社交上手な洒落た紳士、というイメージの方でした。

 「おたくの10分豆腐、大人気ですねえ!素晴らしい」
 「いえいえとんでもない、うちは中小ですから御社のようにはなかなか」
 「美味しいですね、どんな材料を使ってるんですか?」
 「国産大豆100%、そして天然のにがり100%です」

 こんな会話をしてから半年後。ちょうど今から約2年前でした。いつものように、顧客先のスーパーを回っていると、我が社の「10分豆腐」の隣に、N社の「出来立て豆腐セット:国産大豆100%・天然にがり100%」という商品が並んでいるではないですか。してやられた、と思いました。すぐに我が社のスタッフにリサーチをさせたところ、ほかのスーパーにも同商品が並んでいることが分かりました。

 N社は業界最大手です。消費者から見たら、無名の我が社よりも、N社ブランドを手に取りたいと思うに違いありません。規模もけた違いですから、我が社よりもはるかにコスト効率が良く、安い価格で提供できることでしょう。営業力ももちろん優れています。

 勝ち目はないのか……?! 悔しい思いを抑えながら、私は、我が社のコンサルチームと弁護士を緊急招集し、対策を練りました。

 我々の最大の特徴は、我が社だからこそできる、大豆畑を所有し、大豆を育てるところから大豆の選別まで、人の手を使って手間暇かけて最高の素材を使用していることだと明確に定義。さらに、中小だからこそできる、人の顔が見える営業、つまり、我が社の理念や方針を1件1件の顧客に知ってもらう活動を一層強化することだと討議しました。また、我が社の製法は特許も取得していたので、いざという時には武器としても使うことができるでしょう。

 それから1カ月後の業界懇親会で、会場の中に、ダブルボタンのダークスーツを見つけました。私はN氏を目掛けて行きました。

 「御社も豆乳製品を出したんですね。うちの商品が少しは参考になりましたか?」 嫌味を言ったつもりでしたが、N氏は「とんでもない、御社の商品は見たことも触ったこともありませんから。同じアイデアをお持ちだったとはこりゃ光栄です」。

 煮えくりかえるはらわたを抑えるのが大変でした。「あの日あの時、私の目の前で試食をしたじゃないか!!」と喉から出かかりましたが、この時、特許を武器に使うタイミングだ、と確信しました。このままでは本当につぶされるかもしれない。中小企業が最大手に対して訴訟を起こすことは大変なことです。しかし早速、弁護士を通して訴訟に持ち込みました。草の根営業も地道に続けました。

 N社が、「出来立て豆腐セット」を市場から撤退させることになった、という連絡を弁護士から受けたのは、数カ月後のことでした。

 この事件から、我々は2つのことを学びました。

 まず、特許取得は会社を守るということ。さらにグローバル展開を考えているなら、国際特許が必要でしょう。しかし、特許申請には特殊な知識と経験が必要です。我が社は、自社コンサル部門と連携している特許専門弁護士がいたからこそ、スムーズに事を進められたのです。

 2つ目の学びは、自社にしかない特徴を徹底的に際立たせることです。特許申請したからといって安心してしまってはいけません。会社を守ることはできるかもしれませんが、会社の行方を本当に左右するのは、お客様からの信頼です。それは人の顔が見えるお付き合いがどれだけできるかにかかっています。ですから、自社ならではの差別化要素を核に、仕組みと人、この両面から、日々事業運営をしていくことが大切なのだと実感しています。

 皆さんの会社に明日、大きな脅威が突如現れたら、どうしますか? 我が社の経験がきっと皆さんのお力になれると思います。明日は我が身。アクションは今、取るべきです。我が社のコンサル部門ではいつでもコンサルテーションを行っています。本日、是非、初回ミーティングのアポを取ってみてはいかがでしょうか。
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: https://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。