ショッピングモールのエスカレーターを使った昇り方を想定してみましょう。

 モールエスカレーターで2階へ昇ると周りにショップがあります。そのショップをぐるりと見て回ってから、また次のエスカレーターで3階に上がるという作りになっています。首都圏の方なら表参道ヒルズを思い起こすと、イメージを浮かべやすいでしょう。デパートのエスカレーターでも見かけるかもしれません。

 映画『タイタニック』も、この「モールエスカレーター」形式で進んでいきます。

 氷山にぶつかりボイラールームに浸水した(上昇)、でも船の上層階にいる人たちは全く気付かず優雅に過ごしている(安定)、やがて2階も浸水し始める(上昇)、でもキャプテンは楽観視(安定)、手錠をかけられていた主人公ジャックの部屋にも浸水が始まる(上昇)というように「コントラスト」が次々と現れるからこそ、緊張感が徐々に高まり、興味が長く持続します。

 この「モールエスカレーター」方式で徐々に昇っているものは、なんだと思いますか? それは観客が感じる興奮とサスペンスなのです。それが徐々に高まっていくことで、興味は長く持続し、最終的に解決した時には心から安心し、共感し、そのストーリーの当事者かのようにその話を受け入れられるのです。

 人間は、プレゼンの初期段階で感情に訴えかけ、心が動くと、「聴く心と耳」が開いて、前向きに聞いてみる気になります。心の扉を開かせて、そこに論理的な理由を持ってくると、なるほどと納得します。ビジネス上のコーポレートストーリーの際でも、「頭」と「心」を交互にアピールしていくと、うまくコントラストを出すことができます。

 例えば次のような構成です:

 「メッセージをまず主張する」(「頭」にアピール)

 「その根拠となる一つ目のポイントをストーリーで説得していく」(「心」にアピール)

 「そしてそのストーリーがいかに、伝えたいメッセージをサポートしているかを示す」(「頭」にアピール)

 「さらに2つ目のポイントを示す」(「頭」にアピール)

 「2つ目のポイントを説明するストーリーで語る」(「心」にアピール)

 「3つ目のポイント……」

 と、このようにコントラストのあるストーリーを効果的に使い、心を揺さぶりながらも頭にも訴えかける構造が出来上がります。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: http://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。