ストーリー性

 今回のスピーチコンテストニューヨーク州決勝の上位3名には、もう一つ共通する点がありました。それは、人間が誰しも経験する、普遍的な苦悩をストーリーとして描いていた、ということです。

 優勝者のストーリーでは、自分の容姿に自信がないために、色々なチャンスを失ったり、スポーツの試合にまで負けたりという苦悩があったが、負けていたのは実は自分自身に対してだった、という学びがあったこと。

 準優勝者(=私)のストーリーでは、留学時に英語がうまく話せないことで社交性を欠いてしまい、ある時クラスメートに言われた一言で、自分の光を閉ざしていたのは自分自身だったのだ、とハッと気づかされ、悟ったこと。

 3位入賞者のストーリーでは、人生で最も難しかった選択を迫られ、自分が選んだ選択に後悔しそうになった経験から、実はどれが正しいか正しくないか決めるのは自分だ、と学んだこと。

 どれも、状況は違いますが、誰しも人生のどこかの時点で経験したことがあるかもしれない苦悩にスポットライトが当てられています。そして、そこからどうやって這い上がったのか。それをストーリーとして語ることで、聞く人は共感するのです。

 ブレイクスルースピーキングでも、ストーリー選びのコツは、「4つのF」である、というお話をしています。

・Failure(失敗・挫折)
・Frustration(フラストレーション・苦悩)
・Flaw(欠点)
・First(初めての体験)
です。

 人は誰しも、この4つのFを経験します。でもこれらを公に話すことはなかなか勇気のいることです。だからこそ、自分をさらけ出し、万国・万人に共通する普遍的な悩みについて語ることで、人種・価値感・文化・性別・世代を超えて、多くの人々の心に響くのです。

 今年のトップ3のスピーチの勝因は、まさにこの「4つのF」にある、といえましょう。

『20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす』

 長年にわたり、ヒューマンキャピタルOnlineにて、相手を動かすスピーチ・プレゼン術、ブレイクスルーメソッドを基にコラムを書いてきましたが、このたび一冊の書籍として刊行する運びとなりました(朝日新聞出版刊)。ぜひご覧ください。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: http://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。