聞き手にどう感じてほしいのか

 せっかく、ワンビッグメッセージを聞き手の心に焼き付けるために語ったストーリーでも、意図した通りに伝わらなければ元も子もありません。前述のように違う意味に捉えられてしまうのではなく、すべての聞き手に、意図した通りに伝えるためには、まず声に出して原稿を読みながら、色々な言い方を試してみることです。

 しかし、その時、ただやみくもに試すのは戦略的ではありません。

 そのストーリーを通して、さらには、そのストーリーの中の一段落、一文を通して、聞き手にどんな感情を持ってもらいたいのか。つまり、各文章の「意図」を明確にしていく、というプロセスが欠かせません。

 「私は彼女を愛していると言った」

 ならば、それはどんな場面で、誰に対して、どんな「意図」で言っているのでしょうか。

 彼女の親友があなたのところに来て、「彼女はあなたに愛されていない、と嘆いていた」と責められたとしましょう。

 それに対してあなたは半ばフラストレーションを感じ、「私は」愛してると言ったじゃないか!!と伝えることで、彼女の親友に、「彼女を信じてしまったけれど彼は本気だ、悪かったな」と誤解を解きたいのでしょうか。あるいは、「何度も愛していると言っているのに信じてもらえないのが悲しい」という気持ちを強く伝えたいのでしょうか。

 実際、集中ブートキャンプの中でも、自分の原稿の一部分を切り取って、こうした言い方をしてみる実験がありました。

 コーチが、「私たちに、不信感をかき立ててみて」、「私たちに安心感を抱かせて」、「私たちが不安になるように促してみて」、などと指示します。話す文章は全く同じです。でも、聞き手から引き出したい感情を、しっかり「意図」していると、同じセリフでも、聞き手から全く違う感情が引き出され、聞き手役の参加者たちからも、ワオ!という驚きの声が上がりました。

 その一文で、そのストーリーで、そしてそのスピーチ全体として、相手にどんな気持ちになってもらいたいのか。言語化されたメッセージそのものだけでなく、その奥にある「Intention-意図―」を一つひとつ丁寧に確認していきましょう。

 そうすることで、ワンビッグメッセージが相手の心の深いところにしっかりと刺さっていきます。なぜなら、感情はウソをつかないからです。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: http://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。