パーソナルブランディングの技術を提供していると言うと、「流行りのインフルエンサーや、起業家など、特別な人のためのものでしょう?」と聞かれますが、これは大きな間違いです。

 パーソナルブランドはどんな職業の人でも戦略的に構築でき、積極的に自分を表現したい方だけでなく、恥ずかしがり屋の方、内向的な方でも、そしてチームでも取り組むことができます。

 最終回の本記事では、ブランディングの技術を活用して会社員のキャリアパスを再設計した方や、企業研修での導入事例をご紹介します。

(写真:123RF)

メーカーで商品開発の仕事をしながら
地域でも活動する二刀流ブランディング

 大手メーカーで商品開発の仕事をしているAさん(40代男性)がパーソナルブランディングのセミナーに訪れたのは2016年のこと。その時すでにヒット商品を手がけ、メディアに取材された経験もありました。

 会社員として順調にキャリアを築いているように見えたAさんが、パーソナルブランディングに真剣に取り組み始めた目的は「より、メディアに取り上げられやすくなる自分ブランド作り」です。それを通じて、商品を消費者に知ってほしい、百貨店や専門店のバイヤーさんに「売れている感」を印象付けたいからです。

 自身のパーソナルブランドをも武器にして、自らが手がけた商品を売ろうとする姿勢に、私は清々しさを感じました。このセミナーでは、会社と自身の商品開発の哲学を整理して言語化することに取り組みました。いつ取材が来ても対応できるように準備し、また待つだけでなくメディアに対し自分から積極的に取材を働きかける戦略を立てました。さらには通常勤務時のジャケット&パンツスタイルに加え、メディア出演時の服装を「衣装」と捉え、ネクタイやポケットチーフなど小物をよりインパクトがあるものに変更。もともとかけていたメガネも有効活用して、顔写真を印象付ける戦略も立てました。

 Aさんは同時に、子を持つ父親として「イクメン」としての家庭生活や地域活動も、仕事に生かせないかと考え、イクメン活動の肩書きを新たに作り、地域活動で使う名刺も作成。SNSに掲載するポートレート写真も新たに撮影しました。

 Aさんの場合は、会社での商品開発者としての軸に加え、家族・地域活動の軸もブランディングで際立たせ、それぞれが有機的に関連し合って唯一無二の存在感を示すという、非常に魅力的なブランディングを実現できています。

 会社員で与えられたポジションを、個人の発信力を持って十分に開花させて会社に貢献。さらには自分の生活も豊かにする戦略は見事です。なお、これは私がAさんのパーソナルブランディング戦略をアドバイスする立場から見たコメントであり、外側からは、純粋に「自分なりの哲学を持って、多彩な活動をしている人」と見えていることと思います。

 面白いのは、ブランディングが成功している人の「戦略」は外からは見えないことです。半年ぐらい経ってから「最近あの人、なんだか印象がいいよねえ」「頑張っているね」などと周囲の良い噂になるぐらいが、効果的に浸透し成功する、会社員のパーソナルブランディングだと思います。