パーソナルブランディングを
企業単位で導入するには

 パーソナルブランディングは「特定のやる気がある個人」だけのものではありません。企業で研修に導入した事例もご紹介したいと思います。

 きっかけは大手ハウスメーカーの子会社・D社の経営陣、人事部門からのご相談でした。D社は東北支社の売り上げをなかなか上げることができずに困っていました。雪深い冬の間は住宅メンテナンスに費用をかけられない。さらに震災の影響もあり、新築や改築の受注が一気に減ってしまった。全体的に営業パーソンたちの士気が下がっており、仕事を「自分ごと」にしてもらうのはどうしたらよいかというリクエストです。

 そこでこの会社の東北支社管轄内の支店長全員、約50名に対し、パーソナルブランディングのセミナーを実施。参加者は45~60歳の男性が9割以上でした。

 ワーク形式で、まずは自分らしさを表す言葉を自分で書き出してみる、それを参加者でシェアする。次に自分が歩んできた人生の道のりを「年表」として書き出し、参加者同士で話し合う。この「書く→話す」行為を繰り返し行いました。

 このワークにより「自分の当たり前」と「人の当たり前」が同じではないこと、自分が大切にしていることを言語化し伝えるうれしさなど、自分の芯になる部分を確認することができました。

 次に、自分が一番、得意なお客様像(ペルソナ)を考えていただき、得意の営業パターンも書き出してみて、言語化することを行いました。グループワークでお互いの得意な営業スタイルのロールプレイを行い研究し合うことで、それぞれの個性が浮き彫りになります。

 最後は自分らしい「あるべき」服装や、話し方、挨拶、持ち物などをセルフチェック。「お客様にいつも明るい気持ちになってもらいたいから、明日、ピンクのネクタイを買いに行きます!」と宣言した定年間近のベテラン営業パーソン。「自分だけの成績ではなく、チーム力の向上を本気で考える時がきた」と自分の課題に気づいた最年少の支店長。「男性中心の業界の中で頑張ってきましたが、これからは女性の感性をもっと出していいんだと気づきました」とはにかんだ女性支店長には、会場から熱い応援の拍手が送られました。5時間の研修後、会場は明るい笑顔に包まれて、最初はよそよそしかった営業パーソンたちの相互理解が深く進んだことも見て取れました。

 このように、企業研修にパーソナルブランディングを取り入れることで、イキイキとした個性が輝くチームを作ることができます。特に売り上げを競う営業部門や、クリエイターを複数抱えるようなチーム、また店長会議など役職者への導入は、効果が高いと感じています。

「自分を知りたい」
“Who am I?”は永遠の課題

 私は誰なのか、私は何の目的で生きているのか、私はどこに向かっているのか。このようなことを知りたいのは、人間誰しも共通の、そして永遠の願いかもしれません。

 パーソナルブランディングは、単に有名になること、目立つこと、派手に振る舞うことでは決してありません。真のパーソナルブランディングは、自分らしさの「軸」を見つけ、それを丁寧に掘り出し、磨いて整えてあげること。つまり自分自身とじっくり向き合う作業です。

 そして、自分と他人とを比べなくなるため、毎日がラクになります。また、自分の「あり方」に誇りを持てる。変化の激しい時代、地に両足をつけて生きていくために、周囲に流されるのではなく、自分を内省する時間を持ってみませんか。

守山 菜穂子(もりやま・なおこ) 株式会社ミント・ブランディング
代表取締役/ブランドコンサルタント
日経BP総研 客員研究員
守山 菜穂子

多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。(株)読売広告社を経て、2000年(株)小学館に入社。ファッション雑誌や情報誌のメディア営業として、10年間で国内外約1,000社の企業とブランディングのプロジェクトを行う。2010年よりデジタル事業局にて、電子書籍・デジタルコンテンツの開発やWEBマーケティングに携わる。
2014年にブランドコンサルタントとして独立。2017年(株)ミント・ブランディングを設立し、代表取締役に就任。現在は企業やクリエイターに向けてブランディングや広報のノウハウを提供し、企業研修やセミナー講師としても活動する。

守山菜穂子 公式サイト
http://naoko-moriyama.com/

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。