――どうやって説得したのですか?

中島:僕が応募者役、人事部長に面接官役になってもらってNAONAを使った模擬面接を行いました。機器のテストでもありましたが、実際にやってみることで「これなら問題ないな」「面白そうじゃないか」と部内の協力体制が整いました。あとは社内の法務や広報と打ち合わせをして、応募者側の不安を払拭できるように同意書を作ったり、「こういう目的でこういう実験をするが、音声は録音しない、面接で発した言葉はサーバ上にも一切残らない」と公式にリリースを出し、応募者にも事前に伝えていくなど、ていねいにていねいに時間をかけて準備していきました。

――実証実験開始前にきめ細かなプロセスがあったんですね。そこまでできたのはどうしてでしょう。

中島:関わる全員にとってwin-winなプロジェクトだと確信できたからです。このプロジェクトは人事部採用課、NAONA事業部門とマーケティング部門で運用しています。NAONAの用途拡大にもつながるし、採用の質も上げることができます。実施する1年前からいろいろなアイデアが出てきて、人に話したり自分の中で検証していくうちに、絶対に「これはいける」という自信がわいてきたので。大変というよりとにかく楽しかったですね。

1対1コミュニケーションの質の高さが実証できた

――面接のデータを分析して、結果は予想通りでしたか。

中島:ほぼ想定の範囲内でしたが、意外だったのは1対1のコミュニケーションの特殊性です。面接官が1人、2人、3人、それ以上……で分けて会話のテンポや感情の起伏を比べてみると、面接官が1人の時だけ、面接官と応募者のテンポが同じくらいになり、感情値がプラス側に出てきます。面接官が2人以上では人数が変わってもあまり差が出ません。

NAONAは端末側でエッジ処理を行い、会話内容を音声特徴量に変換した後に元データを廃棄しているため、会話内容の録音、サーバ上への個人情報の記録などは行っていない。(出所:村田製作所)
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――つまり、1対1だとコミュニケーションの質がずば抜けて高いということですね。

中島:そうなんです。大勢を集めて一気に面接した方が効率的に思えますが、1対3の面接より、15分でもいいから1対1で面接する方が面接の質が上がるわけです。1対1コミュニケーションの力強さ、特殊性が数値で示されたのは新しい発見でした。