「働き方」改革から「働きがい」改革へ

 2018年2月27日、日経BP総研が主催した「社内コミュニケーション改革セミナー」では、講師・永禮弘之氏への質問をスマートフォンによるリアルタイムアンケートで募集。その場で、多数の質問が寄せられた。

 イノベーションを起こし、成長を続ける組織へ変革するには、社員と企業のエンゲージメントを高めることが第一だ。そのためには「働き方」改革だけでなく、社員一人ひとりが「働きがい」を実感できる改革に取り組む必要がある。

 その鍵が、社内コミュニケーションのあり方を見直すことだ。

 「上司と部下」の関係のタテのコミュニケーション、そして「組織全体、部署間」というヨコのコミュニケーションを、同時に改革していく必要がある。

 本コラムでは、そのポイントをセミナー参加者から寄せられた質問からひもといていきたい。いま、企業の人事担当や経営企画担当、マネジャーが実感する、社内コミュニケーションに関する現場の悩みとは? その処方箋を永禮氏が解説する。

Q. 部下から「個別面談(1on1)」を止めたいと相談されました。どうしたらよいでしょうか。

A. 部下が上司との個別面談を望まない理由は、3つ挙げられます。

永禮 弘之氏
永禮 弘之(ながれ ひろゆき)
株式会社エレクセ・パートナーズ 代表取締役
化学会社の営業・営業企画・経営企画、外資系コンサルティング会社コンサルタント、衛星放送会社経営企画部長・事業開発部長、組織変革コンサルティング会社取締役などを経て現職。
多数の企業や官公庁に対し、1万5,000人超の経営者、経営幹部、若手リーダー育成を支援。ATD(アメリカに本部がある、世界最大規模の人材開発・組織開発の会員組織)日本支部理事、リーダーシップ開発委員会委員長。早稲田大学、立教大学をはじめとする教育機関でのリーダーシッププログラムの講師も務める。
人材育成、マネジメント、組織開発をテーマにした出版、メディア掲載も多数に上り、主な著書に『強い会社は社員が偉い』『ホワイト企業』(日経BP社刊)。

 この連載の第5回第6回で、個別面談(1on1)のメリットと具体的な実践方法について、お伝えしてきました。

 2018年4月、「社内コミュニケーション改革セミナー」の会場内で実施したリアルタイムアンケートでも、「個別面談(1on1)を実施している」とほぼ半数の来場者が答えました。とはいえ、当日会場の参加者から挙がったのが、今回の質問です。

 同様に、会社からの指示で個別面談を行っているものの「意義が分からない」「効果が実感できない」という、上司や部下の立場の人も多いのではないでしょうか。

 では部下は、なぜ個別面談を受けたくないのでしょうか。個別面談において、上司が陥りがちな3つの落とし穴を、例を挙げながら説明していきましょう。

個別面談は、指示や指導の場ではありません

 まず、上司であるあなたは、個別面談の意義を理解しているでしょうか? 上司にありがちな間違いが、通常の打ち合わせと同様に、部下への業務指示や仕事の進捗確認に終始することです。個別面談では業務の軌道修正や改善指導もできるため、上司にとっては都合がいい時間です。ところが部下は、定期的に上司から業務を監視されている、指示されている、という印象を受けてしまいます。

 新入社員や、異動したばかりで経験が浅い部下であれば、定期的に上司の指示や指導を受けられることをメリットに感じるかもしれません。ただし、この連載の第5回でもお伝えした通り、個別面談の真の目的は、部下の成長支援です。ですから個別面談が、上司主導の業務指示の場になってしまうと、部下の自主性や成長意欲を損なう恐れがあります。

 以前、ある大手企業の管理職研修の一環でコーチングを行った時のことです。40代後半で担当業務に習熟しているマネジャーの方から、部下にどこまで業務を任せ、どのように改善指導すればいいのか、そのバランスに悩んでいるという相談を受けました。

 笑顔を絶やさず話しかけやすい、雰囲気の穏やかな方で、部下の面倒見もよい人でした。一方で、ご本人から共有してもらった360度フィードバックには、「なんでも知っていて頼もしい上司だが、細かい部分まで指示される。もう少し部下に任せてほしい」という複数のコメントが記されていました。

 そこで、部下に対する業務の進捗管理のやり方を尋ねたところ、毎週、部下全員と個別面談を行い、指示や指導を綿密に行っていることが分かりました。その方は、部下が業務で迷わないように、親心から部下の相談にのっているつもりだったようです。ところが部下たちは、箸の上げ下げまで指示されている印象を受けていたのです。