働く人や組織開発に関するトレンドやキーワードは次々に登場しますが、果たしてそれは本質をついた議論か?と感じることがよくあります。ここでは、異分野での取材やリサーチも踏まえ、人材と組織にまつわる「当たり前」を見直すきっかけをお伝えしていきます。
(文=原田かおり:日経BP総研 ヒューマンキャピタルOnline編集長)

「有給休暇取得祈願法要」に行ってみた

仏事や祭事に使用する「かわらけ」。これを割る。

 2019年1月19日土曜日。

 少し前のことだが、「有給休暇取得祈願法要」が行われた。株式会社寺社旅・代表取締役社長の堀内克彦氏がプロデュース、日蓮宗の光胤山本光寺(千葉県市川市)で尾藤宏明住職によって執り行われた。

 1月19日に開催したのは「良い休暇」の語呂にあわせて。さらに「働き過ぎで119番に電話しないように」との願いも込めたという。開始時間も午後1時19分(13時19分)からという徹底ぶりだ。

 本堂で尾藤住職による読経と説法をいただいてから、参加者全員で「かわらけ割り」を行った。かわらけ(土器/皿とも書く)とは仏事や祭事に使用する器だ。有給休暇(有休)取得のために断ち切りたい悪縁を書き込んだうえで、境内の一角を目がけてかわらけを思い切り叩きつける。

 平安時代、怪物の鵺(ぬえ)を退治したという源頼政の神像を祀る本光寺は「縁切り」の寺としても知られる。堀内氏は「仕事の忙しさが醸し出す間違った優越感、会社を休むことに対する罪悪感との縁切りをしてほしい」と法要の狙いを話す。

 参加者の30代男性に話を聞いた。

 なんとこの日、三重県から訪れたという。サービス業の仕事に就いている男性はなかなか有休が取れず、この日が偶然公休だったため参加できた。法要後はそのまま帰宅、翌日は出勤日だ。「公休だろうが関係なく、職場から電話がかかってきます。もう、携帯電話の電源を切るしかありません。明日出社したら、有休取得祈願をしてきたと話します。それで社内の雰囲気が変わってきたら、次回は有休を取って御礼参りに来たいです」

有休が取れない理由や悩みを思いつく限り書きつくす。

 かわらけを割った後の彼の清々しい顔が印象的だった。筆者も同様に、かわらけに思うところをみっしり書き込み、地面に思い切り投げつけた。本当に割っていいのだろうかとためらいもあったが、割れた後の爽快感は格別だった。

 尾藤住職は「私がお話を伺う中で、最も多いのは人間関係に関する悩みや苦しみです。『縁切り』の寺ですので、会社なら上司と部下などの人間関係で縁を切りたいという内容を多くいただきます」と話す。「働き方改革ということが盛んに言われていますが、有意義な人生を送るためには、休み方改革こそ実践してほしいと考えています」