前回、様々な企業でグローバル人材育成をサポートしてきたウィル・シード 藤森亜紀子氏のインタビューをお伝えした。今後のグローバル人材には、海外で、または日本にいながらにして、現地のスタッフやステークホルダーを巻き込み、動かし、成果を上げていくスキルが必要になる。

 実は、海外トレーニー制度などのグローバル人材育成は、次世代リーダー育成のために行われている施策でもあるという。企業におけるリーダー育成の在り方に踏み込みつつ、さらに藤森氏に話を聞いた。

肝心なのは、派遣者本人のマインドセット

――グローバル人材育成のきっかけになる制度、例えば海外トレーニー制度立ち上げについて主導権を持っているのは経営企画や人事部門です。ベストな派遣者を見つけ出すには、社内の人脈がどれくらいあるかがカギですね。

藤森亜紀子氏(以下、敬称略):はい。公募して誰かが手を挙げるのを待っていては始まりません。事業部門の長に必要性を説いていって、味方を作ることが早道です。例えば、大手メーカーのように事業部門をたくさん持っている企業なら、事業部門ごとの業務がドメスティック寄りなのかグローバル寄りなのかというような特徴があります。グローバルに近い事業部門を口説いて味方を作れれば、その部門長が海外の現地拠点に連絡して受け入れ要請をしてくれることもあります。

 とはいえ、受け入れ先に「派遣者には1000万円もかけているから面倒をみてやってください」とはなかなか言えません(笑)。「使い放題使ってください」と言って派遣者を送り出す。そうすると、派遣者本人に働きかけていくしかありません。将来のリーダーとして期待していると伝えること、たとえ雑用ばかり振られても学べることは必ずあるのだと本人にマインドセットしていく必要があります。

株式会社ウィル・シード GHRD事業部ゼネラルマネジャー 藤森亜紀子氏
ミネソタ大学教育行政政策研究科修士課程修了。2008年、同社に入社。グローバルHRD事業部の立ち上げ当初より商品開発を担当。海外トレーニー支援や、海外の第三者企業派遣を通じ、800名以上の海外業務研修生への研修やコーチング面談を企画・実施している。

 例えば、日本から社長や役員などが現地拠点に行く場合の「出張者対応」もその一つです。ゴルフの予約をする、食事の予約をする……といった仕事でも、普段ならなかなか会えない役員からどんな話を聞けるのか。グローバルビジネスに役立つ話を聞けるチャンスだなと本人に気づかせる。

海外トレーニー制度が日本企業の強みを拡げるきっかけに

――小さなきっかけを逃さない。そのきっかけをつかまえて、本人がどれだけ動けるかをフィードバックする。言語化していく。

藤森:制度の立ち上げ時は、派遣者本人のマインドセットが肝心です。人事部門や私たちがサポートしながら本人がいい成果を出していくと、受け入れ先も「優秀な人が来る、使えるな」と分かってくる。しかも、日本とのパイプもできるというメリットも見えてきます。そうすると、受け入れ先からのアプローチが始まります。「せっかく来てくれるなら、これをしてほしい、これを新プロジェクトの足掛かりにしたい」と言い出してくれる。制度の歯車が回るようになります。

 職種で言えば、受け入れ先がR&D部門なら「日本のモノづくりを教えてほしい」と受け入れやすい。一方で、営業企画や営業推進といった職種や部門は米国にはありません。日本独自の部門ですね。こうした部門の派遣者が現地で成果を出すと、受け入れ先でも同様のファンクションを置いたらどうかという意見も出てくる。海外トレーニー制度をきっかけに、日本企業の強みが受け入れ先にも移植されていきます。