――体験型のグローバル人材育成というと、さらに育成のハードルが高いのではないでしょうか。

藤森:私自身も海外で働いて、本当に苦労した経験があります。グローバル人材育成は新規事業として2011年に立ち上げました。海外で実際に働く体験を、派遣者本人の学びの最大化につなげたいと考えました。その一つが、企業が保有する自社海外拠点に社員を送り出す研修を支援する「海外トレーニー支援」です。

 ウィル・シードでは、グローバルビジネスナビゲーション(以下、GBN)という独自の成長指標を作りました。言い換えると、派遣者本人のための「達成基準」です。言語、異文化理解、関係構築、グローバルビジネス意識の4領域を提示して、0~5の6段階で達成度を示しています。

 海外で、しかも何もかもが初めての環境の中で成長していくには、派遣者本人が自分の達成度を客観的に判断できなければなりません。その自己評価能力を高める必要があると考えました。何ができないと次のレベルに上がれないのか、それができたらその次は何なのかと見えてこないと、自分でPDCAを回していくことが難しい。成長計画が立てられません。例えば、スタート時に片言の英語を話している状態から、1年後にファシリテーションできるレベルになることがゴールだとします。GBNを使えば、1年間という限られた時間で、何にどれくらい時間をかけるべきかが分かります。

(図版提供:ウィル・シード)
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――本人が、成長のプロセスをバックキャストで考えられるのですね。

藤森:はい、ゴールだけでなくて、プロセスが見えることが大切です。ルーブリックという学校教育の自己評価手法を参考にしました。子供が自己評価できるように、学校の先生と子供が一緒に評価指標を作っていくものです。

 企業のグローバル人材育成ではよく語学力と異文化理解の2つが挙げられますが、GBNの特徴は、そこに関係構築とグローバルビジネス意識という学習要素を付け加えたことです。海外赴任した人、海外トレーニーを経験した人、日本にいながら海外と仕事をしているという人にインタビューをして、抽出した共通項から作りました。言語と異文化理解はグローバルビジネスのベースです。そこに関係構築とグローバルビジネス意識の力を身につけることが重要です。

「グローバル人材」の定義は企業で異なる

藤森:痛感したのは、企業のグローバル化のフェーズや業態、職種によってグローバル人材に求められるスキルが全く違うことです。例えば、自社製品を海外の営業拠点で販売しているが、実は顧客も日本企業だという場合。これなら、ローカルの営業支援メンバーをマネジメントするスキルは必要ですが、基本的なビジネスは日本と同じです。これなら関係構築までできれば大丈夫でしょう。

 一方で、M&Aを経て相手先企業とシナジーを生み出すことがミッションだという場合。お互いのリソースを活用してどのような新ビジネスを生み出すか、お互いの輸送網を活用して製品をどう流通させるかなど、相手国の原理原則、マクロ環境への理解も必要になってきます。こうなると関係構築だけでは事足りません。

――さらに高度なグローバルビジネスを構築していく。それを体験型プログラムでどう学んでいくのですか。

藤森:GBNをもとにスカイプを使って、派遣者とメンターでモニタリング面談を実施します。自己評価のレベルをもとに、1カ月間でどういう業務をしたか、どんなステークホルダーがいたのか、どうアプローチをしたのか。さらに意図したリアクションが取れたのか、できなかったのなら何が理由なのか、では、どう改善していけばよいか……といった1on1を行います。そうして評価のレベルをクリアできたら、成功要因は何だったのかと振り返って自分の中でノウハウ化していく。次のレベルに上げるための後押しと再現性を高めていくためです。

 私たちはGBNのレベルを上げるにはどういう壁があるか、何を行えば派遣者本人が壁を乗り越えられるかというノウハウを蓄積しています。派遣者に答えを教えるのではなく、派遣者自身が自分で気づいてほしいのです。その気づきを引き出すことがポイントです。