――企業で海外トレーニーに選抜されるのは、次世代リーダーとして期待されている人材なのでしょうか。

藤森:30歳前後の方が多いです。リーダー育成の点でいうとフラグがつく少し手前の人でしょうか。とはいえ海外トレーニー制度で、一人派遣するには約1000万~2000万円かかりますから、会社のリーダープール層の人材ともいえるかもしれません。

 例えば、私たちがお手伝いしているサントリー様は毎年海外トレーニーを派遣されています。経営と人事と現場がサポートして派遣者の成長を最大化する制度になっていると思います。

 帰国した派遣者の成果発表会には、次に行く派遣者に加えて、経営幹部の方が出席されます。次の派遣者は「1年後にこれだけのプレゼンができるようにならないと」と自覚も持つようになりますよね。それに、若手社員にとって役員の前で30分プレゼンできるのは大きなチャンスです。その発表会の参加者から出てくるコメントも温かいんです。会社全体で人材を育成していることがよく分かる、次に行く派遣者も自分がどんなに期待されているのかがよく分かる場が作られていると思います。

グローバル人材育成に対する経営者の問題意識

――それは人材育成の仕組みとして、非常にうまく回っている例ですね。では、これからグローバル人材育成に取り組みたいという会社の場合、施策の重要性と必要性を周知していく、導入していく時の苦労とはどんなものでしょうか。

藤森:2012年に、早稲田大学の白木三秀先生と一緒に、日本企業で海外トレーニー制度がどれくらい実施されているのか調査したことがあります。

 アンケートに回答した企業の6割が実施しているか、実施したいと答えました。海外トレーニー制度は非常に費用がかかりますし、若い世代に対する投資ですから、かなりチャレンジングな施策だと思います。なので、どうしてグローバル人材が必要なのかという企業独自のストーリーと、人材を育てなければならないという経営者の強い問題意識がなければ、立ち上げることは難しいと思います。

 今は海外企業とのM&Aで会社を大きくしていくビジネスが増えています。日本にいながらにして海外拠点をガバナンスする、海外に行っている人と連携しながらビジネスを進めていく。それに応えられる中堅層の即戦力化についてご相談いただくこともあります。または言語力習得には時間がかかり、異文化への柔軟性が求められることから、若手から育成しなければと危機感を持たれている企業からご相談をいただくことが多いです。

 取り組みやすいのは、自社の海外拠点に派遣する海外トレーニー制度です。

 現地の受け入れ先が受け入れてくれるか。一方で、派遣元となる事業部が優秀な人材を出してくれるか。この2つが大きな問題で、両輪で取り組んでいく必要があります。まずは、人を出してくれる事業部を、経営企画や人事部門の人脈で探すことから始まります。

(7/2公開記事に続く)

原田かおり(はらだ かおり) 日経BP 日経BP総研 ヒューマンキャピタルOnline編集長
原田かおり

出版社を経て、2000年 日経BP社入社。カスタム出版やオウンドメディアのプロデュースを数多く手掛ける。ゴールドクレジットカード会員誌『クオリテ』(東急カード)、Webマガジン『大人の心得帳』(NTT東日本フレッツ光/東急文化村)など編集長として企業機関誌やオウンドメディアの創刊・リニューアルを多数経験。2018年2月、「社内コミュニケーション改革セミナー」全体プロデュース・講演。同年7月、ヒューマンキャピタル 2018 「ワークスタイル変革SUMMITパネルディスカッション」モデレーターを務める。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。