(写真:123RF)

 今年最後の公開日となるクリスマスイブに向けて、この記事を書いている。この1年間、取材や講演などを通じて実感したのは、日本企業の雇用と組織のあり方が大きく変わり始めた年だったことだ。2020年、日本企業のこれまでを振り返り、どう変えていくかを考える道しるべとして、今年発刊された書籍の中から編集部が選んだ。

 とはいえ「今年発刊」とした点で自らの首を絞める結果になった。そのために紹介できなかった書籍も多い。日本的雇用の歴史と現代、個人データの利活用、コーポレートガバナンス、ヒトとその進化――と幅広い選書になった。年末年始に読んでほしいというもくろみもある。ほとんどが電子書籍でも読めるが、年末は新刊点数が増える時期だ。ぜひ書店で「知の逍遥」も楽しんでほしい。

日本的人事慣行の、終わりの始まり

 4月、経団連の中西宏明会長が「終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている」と発言、続いてトヨタ自動車が総合職採用に占める中途採用を中長期的に5割まで引き上げると発表した。6月には、育児休暇から復帰したカネカ社員が翌日転勤辞令を受けたことをきっかけに退社を余儀なくされ、SNSで炎上した事件もあった。

 新卒一括採用、終身雇用(年功賃金)、転勤辞令(単身赴任)などの人事慣行が立ち行かなくなってきた一端といえるだろう。では、なぜ日本独特の人事慣行が成立したのだろうか。

『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』
『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』
小熊英二 著 / 講談社現代新書 / 1,430円(税込) / 608ページ / 2019年7月刊

〈雇用のありかたが日本社会の骨格となった〉
 同書では日本人の雇用は「大企業型」、「地元型」、「残余型」の3つに大別する。この「大企業型」からいわゆる日本的人事慣行が形成されていく。複数企業を経験した職務の専門能力や学位が重視される欧米に対し、日本では一つの企業での勤務経験の努力が評価されてきた。他国では職種別組合や学位が人材の判断材料となっているが、日本の学校教育(大学)が人材の品質を保証する機能を担ってきたからだ。新卒一括採用、定年制、人事考課制度は明治時代の官庁や軍隊に起源があり、戦後、能力によって社員を査定し資格を付与する職能制度成立へとつながっていく。そして日本型雇用が完成したのは、実は高度成長期「以後」であったと著者は指摘する。海外との比較も含めた日本的人事慣行の歴史を俯瞰できる一冊だ。