「ビジネス哲学対話」という研修サービスを展開している団体がある。特定非営利活動法人(NPO)こども哲学・おとな哲学 アーダコーダだ。

 「哲学は実業や実生活には関係ない」という感想を抱く人も多いかもしれない。だが、このビジネス哲学対話については、それは誤解といえる。

 「参加者同士がフラット」「結論を急がない」「ゆっくりじっくり話を聞き、話す」という場で、他者と共に約2時間のあいだ、問い、考える――。このような哲学対話が、企業で働く人とチームにもたらすものは何だろうか。ビジネス哲学対話のファシリテーターを務めるアーダコーダ理事の井尻貴子氏に話を聞きつつ、ビジネスの現場で生きる人々に必要な、深く考え対話する時間の効用を探る。

他の人と共に問い、考え、語り、聞く

――「ビジネス哲学対話」という名前がつけられていますが、ここで言う哲学対話とは何でしょうか。

井尻氏(以下敬称略):哲学対話は一般的に「対話を通して哲学すること」を指しますが、アーダコーダではもう少し具体的に、「正解のない問いについてグループで考えること」あるいは「他の人と共に問い、考え、語り、聞くこと」であると説明しています。

(筆者注:哲学対話という活動には西欧では100年以上の歴史があるとされる。現代においては1970年代に米コロンビア大学のマシュー・リップマン哲学科教授が学校の教室で子供たちと対話を始めたことで注目を集めた。また、1990年代にフランスのカフェで始まった「哲学カフェ」の活動を通しても話題になった。日本では近年、子供向けの哲学対話が教育プログラムの一環として各所で実施されている。アーダコーダも「こども哲学」の普及・推進活動を展開している)

 アーダコーダのメンバーは、大学教員や一般企業の会社員など様々なバックグラウンドを持った者がいます。2014年の設立以来、子供向けや大人向けの哲学対話を社会の様々なシーンで行ってきました。その流れで、ビジネスの現場で働く方々からもお声がかかるようになり、「ビジネス哲学対話研修」として展開するようになりました。

 ビジネス哲学対話では、哲学者の思想を勉強することはありません。ただし、この「他の人と共に問い、考え、語り、聞く」というアプローチは、まさに哲学者のアプローチそのものです。そのプロセスを、ビジネスの現場で働いている皆さんにも体験していただきます。