「パワハラ防止法」とも呼ばれる、改正労働施策総合推進法が施行される。これにより、パワーハラスメントの防止に向けた労働管理が初めて企業に義務付けられる。大企業は2020年6月から、中小企業では2022年4月から適用となる。

 罰則規定はないものの、各種の措置義務に違反した場合、国からの助言・指導・勧告があり得る。また勧告に従わなければ企業名が公表され、市場からはブラック企業であると認識されるおそれがある。

 企業にとって法律遵守は必須だが、それ以前の問題としてパワハラが常態化するような職場では雰囲気が悪化し、中長期的には生産性の低下、売上・利益の低下を招きかねない。

 「この施行をきっかけに、経営者にはあらためて、リーダーとしての適切な振る舞いが問われている」と語るのは、ピースマインドの代表取締役社長、荻原英人氏である。ピースマインドは1998年に創業。はたらく人のメンタルヘルスケアをはじめとした相談サービス を提供するEAP(従業員支援プログラム)や、ストレスチェック、心理学や行動科学に基づいたマネジメント支援、ハラスメント対策支援などのサービスを提供しており、年間の相談対応数は1万8000件に達する。

 「企業としてパワハラ的なコミュニケーションが容認されるような現場を放置していれば、今後は法律遵守という観点から問題になる。それだけでなく、SNS、マスコミなどでレピュテーション(評判)に即影響が出るため、労働市場からも社会からも見放されかねないリスクがある」(荻原氏)

 ピースマインドで組織コンサルティングや研修講師、カウンセリングを担当している吉野学氏(事業推進室長兼組織ソリューション部コンサルタント)は、「パワハラをしないということは、相手を一人の人間として尊重したコミュニケーションを心がけることに等しい。そのようなコミュニケーションが行われている職場は、いきいきとした職場であろうし、自然と生産性も高まっている」と語る。吉野氏、そして荻原氏に話を伺いながら、企業がパワハラ防止法を通じて問われているものは何かを探る。

企業が取るべきパワハラ対策の「3ステップ」

 ピースマインドは企業が取るべきパワハラ対策について、次の3ステップが望ましいとする。「予防」「備え」「フォローアップ」だ。

 予防とはパワハラが起きないようにする教育・訓練を指す。社員に対するハラスメント防止教育、また例えば「傾聴トレーニング」「アンガーマネジメント」「アサーション」といったようなコミュニケーションを円滑にするためのトレーニングを実施する。

 このステップでもう一つ重要なのは、パワハラの早期発見・早期対応の仕組みづくりだ。例えば職場アンケートや360度評価のデータを参考に、兆候ともいえる動向をつかみ、まさに予防的な取り組みをすることが挙げられる。

 吉野氏は「人事部門が日頃から情報収集をしておけば、注意を払うべき人が見えてくる。これにより本格的なパワハラ事案に発展することを防ぎやすくなる」と語る。

 要注意とみられる職場が判明した場合のアプローチはケースバイケースだ。「パワハラを受けたと主張する社員が敏感になりすぎているケースもある。実態を確認するため、慎重に進めていく必要がある」(吉野氏)