今回から本コラム「働くひとを幸せにする経営と技術」を担当いたします。人、組織、社会を幸せにする経営手法や技術をお伝えしながら、Goodな社会をつくる道筋を探ります。また、筆者が体当たりでつかんだ、ビジネスパーソン目線のメンタル改善ノウハウもご紹介します。
(文=高下 義弘:日経BP総研 客員研究員)

 手を使って、絵を描く。この極めて感性的な行為を、人材育成や組織改革に取り入れようとする動きがある。

 経営コンサルティング会社のシグマクシスは、企業向けコンサルティングの中に「絵を描く」プロセスを採用している。絵を描くプロセスを取り入れたことで、社員の自発的な変化が促され、社内が活性化したケースがあるという。

 絵を描くことが、社員や組織にどのようなインパクトを与えるのか。「人財組織変革」をうたうコンサルティングサービス「Vision Forest」の責任者(ビジョンフォレスト ディレクター)であるシグマクシスの杉山誠氏に話を聞きつつ、「手を使うこと」の価値を考える。

「絵を描く」ことが引き出すもの

―― 「絵を描く」ことを経営コンサルティングに組み入れていると聞きました。何が狙いなのでしょうか。

杉山誠氏(以下、敬称略):絵を描くことで、自分を多角的に見ることが促されます。ひいては、観察力、共感力、自己認知力、適切な問いを生み出す力といった能力が養われます。このような「絵を描くことのパワー」で人が自ら変わろうとする力を引き出し、その力を組織にも還元するのが狙いです。

 「絵を描く」を組み込んだコンサルティングメニューは「Vision Forest」というもので、企業で働く人のマインドセットや行動の変容を支援するプログラムです。「イノベーティブな組織にしたい」「チェンジリーダーを育てたい」といったご要望に応えるべく開発しました。

「Vision Forest」プログラム中の様子。受講者が描いた絵の描画体験をシェアしている。(写真提供:シグマクシス)

「外から働きかける」方法には限界

 社員のマインドセットを変えるというニーズはどの企業でも根強くありますが、研修後の一過性の変化で終わってしまうのも事実です。従来の研修に意味がないわけではないでしょうが、私としては、人のマインドセットを外側から変えるのは難しいと見ています。

 Vision Forestでは違ったアプローチを採用しています。絵を描くことの意義を説明するために、先にプログラムの全体像から説明します。

 Vision Forestとその前身となるプログラムでは、これまで5000人以上の受講者にワークショップを実施してきました。Vision Forestを通じて変化した人の傾向を抽出しますと、「VRA」を備えている人だということが見えてきました。ここでの「変化した人」とは、「自律的」とか「変革者」といわれる行動を取る人です。

 VRAはVisioning(ビジョニング)、Reflection(リフレクション)、Action(アクション)の3つの要素をまとめた言葉です。1つ目のビジョニングとは、自分自身が自然と「これがやりたい」と思える対象や実現したいことを見つける能力を指します。