自分の「思考の枠」や「実現したいこと」を発見

――絵を描く体験を通じて、受講者にはどんな変化が起きるのでしょうか。

杉山:受講者の中で気づきが増えてきます。例えば絵の感想を述べたり聞いたりする中で、「自分の思考パターンは固定的ではないだろうか」とか、「自分は人の感じ方を頭ごなしに否定していないだろうか」といったことに考えが及びます。

 こうした自分のパターンに気づくことを、「思考の枠組みに気づく」と呼びます。思考の枠組みに気づくことができた受講者は、仕事の場に戻ってもその延長となる体験ができます。例えば仕事へのアプローチが画一的であることに気づいたり、チームメンバーの見解を汲み取れていなかったと気づいたりします。これらの受講者の気づきが新しい行動を促し、ひいては組織変革につながります。

 先にも申し上げましたが、人は多くの場合、外側から変われと言われても、なかなか変われないものです。けれども自分で気づくことさえできれば、変化はスムーズです。絵を描くことでこうした「自分から変われる」状態を誘発できるというのがポイントです。

 さらに「自分が人生でやりたいことは何なのか」が見えてくる受講者もいます。それが会社における事業テーマとうまく結びつけば、受講者は事業テーマを主体的に、かつ積極的に推し進めるようになる傾向があります。

――仕事とは関係なさそうな絵を描くことが、自律的な人が備えているVRAの能力を自覚し、自ら伸ばそうと決意するきっかけになっているのですね。

杉山:はい。私自身も受講者として体験しているのですが、絵を描くプロセスは貴重です。黙々と手を動かす中、自分のビジョンや生き方について自問します。これは重要な機会です。

 絵を描き終わった後は、再びシグマクシス側が進行を引き継ぎます。事業や人財開発の観点から振り返りを行い、絵の体験で得た気づきを仕事現場で使える形に誘導します。

現場が活性化

――採用した企業からは、どんな感想が聞かれていますか。

杉山:大手企業のある事業部門でVision Forestを導入していただいています。この事業部門は全社的なコスト削減の流れの中、挑戦的な仕事がしにくい状態にありました。そこで部門長の決断で採用されたのですが、現場を活性化でき、社員から新しいサービスや業務効率を高めるアイデアが次々と出てくるようになったと伺っています。

 新サービスを実現するには試行錯誤や苦しい思いが伴います。けれども、VRAで説明されるビジョンを描く力、振り返り見直す力、行動し続ける力があれば、壁を突破しやすくなります。

業種・業界横断で「絵を描く」体験を

――このVision Forestを企業を超えて横断的に実施するプログラムもあると伺いました。

杉山:はい、「KOERU Change Leader Lab」というプログラムで、いわば「業種・業界横断型の自律型人財育成プログラム」です。各企業で次世代を担うようなリーダー層に受講していただきます。これまでの参加企業数は2019年4月時点で34社、受講者数は145人となっています。

 企業規模も異なる、また業種・業界も異なる、そのような次世代リーダー層の方々が一堂に会して取り組みます。回によってはベンチャー企業の社長と、いわゆる重厚長大産業のミドル層の社員が一緒に受講します。

――同じ年代の人でも、所属企業や立場が違えば、考え方もだいぶ異なるでしょうね。

杉山:実はそれが狙いの一つでもあります。同じ組織内に居続けるとどうしても考え方が似てきてしまいますが、異なる組織の人と交わることで刺激を受けます。これは新しい発想を生み出すのに重要なことです。

 ミドル層の社員の受講者は、ベンチャーの経営者と一緒にワークショップに参加することで大変な刺激を受けている様子です。特に同じ年齢層のベンチャー経営者が参加している場合はなおさらのようです。

(写真提供:シグマクシス)