「ロボットとAI(人工知能)が仕事を奪う」。産業界では、こんな議論が繰り返しなされて久しい。

 実際、事務作業の比率が大きい分野では、RPA(ロボティクス・プロセス・オートーメーション)の導入によって著しく自動化が進み、社員に別業務への配置転換を促すケースが増えている。これはまさに「仕事を奪う」の典型だ。

 しかし、蒸気機関から始まる人類の近現代史を振り返ると、新しい技術の登場は、その技術を支える新しい仕事を作り続けてきた。

 ロボットやAIも例外ではない。ロボットの登場に伴う新しい職種を定義し、その職種を担う人材を大量に募集することを宣言したベンチャー企業がある。農業ロボット・ベンチャーのinaho(イナホ)だ。

inahoが開発している収穫ロボットの外観。アームで作物をつかみ、かごに入れる。白線は自動運転のためのガイド(写真提供:inaho)

 inahoが募集し始めた新しい職種とは「アグリコミュニケーター」。農業用ロボットの現場での導入や運用を支援する人材である。菱木豊共同創業者兼CEOは「2022年までに240人を採用し育成したい」と語る。2017年1月の創業から約2年半、しかも2019年5月で全社員数20人にも満たないスタートアップが、これだけの採用を宣言するケースは珍しいと言える。「ロボットは新しい価値を創造し、そこから新たな雇用を生む」と菱木氏は語る。

 アグリコミュニケーターとはどんな人材なのか。どんな仕事なのか。inahoの社員で、アグリコミュニケーターとして勤務する三浦良真氏に話を聞いた。三浦氏の話を通して、テクノロジーが生み出す新しい仕事の姿を見る。

ロボットにまつわるコミュニケーション全般を担う

――アグリコミュニケーターとは何をする仕事なのでしょうか。

三浦氏:私たちはアスパラガスやキュウリの収穫を担う収穫ロボットを開発しています。農家の方に使っていただく際の導入を支援したり、運用時に困ったことがあったらサポートしたり、農家の感想や要望をくみ上げてそれをロボットの開発チームにフィードバックしたりといったことをするのが、現在のアグリコミュニケーターの役割です。

inahoでアグリコミュニケーターを務める三浦良真氏
(筆者撮影)