inahoは神奈川県鎌倉市に本社を置き、佐賀県鹿島市に支店があります。特にinahoでは支店長とメンバーといった役職は置いていないのですが、私はオペレーションを作りあげるためにリーダー的な役割として支店長のような業務もしています。

――佐賀県に支店を設置した理由は。

三浦氏:佐賀県はアスパラやキュウリで国内トップクラスの生産量を誇る産地で、収穫ロボットの潜在顧客が多いためです。

 今(5月中旬)、収穫ロボットは商用サービスに向けた実証実験のフェーズにありまして、機能や性能についてさらにブラッシュアップしている段階です。佐賀県に支店を置くことで、テストユーザーとなっている農家さんとのコミュニケーションが密にできています。リモートアクセスが簡単な時代になりましたが、収穫ロボットの場合は現場の状況を直接確かめて初めて分かることが多いので、現場の近くに拠点を置くのは有益ですね。

 収穫量が多いということは、ロボットの検証と品質向上にはもってこいの高負荷環境であることを意味します。こうした農家さんの声を開発チームにフィードバックするのも、アグリコミュニケーターである私の重要な仕事です。

――アグリコミュニケーターという名称が付いていますが、農家、そしてロボットの開発現場との間でコミュニケーションをとるという仕事なのですね。

三浦氏:最近、農業ITは「アグリテック」あるいは「精密農業」といったキーワードで頻繁に取り上げられるようになりました。しかし収穫ロボットというのは今までにない新しいジャンルの機械ですし、農家さんが採用に慎重になるのは当然です。

 そのため、収穫ロボットについて農家さんへ丁寧に説明して認知してもらったり、興味を持っていただいた農家さんの相談に乗ったり、テスト導入していただいた農家さんを手厚くサポートすることが欠かせません。農家さんを間近で見ている自治体やJAにご協力いただくことも重要です。

 収穫ロボットの市場調査やマーケティング、広報活動、営業やコンサルティングもしていますので、「アグリコミュニケーター」はロボットにまつわるコミュニケーション全般を担う仕事とも言えるのかなと感じています。

ロボットへの期待を実感

――収穫ロボットへの反応はいかがですか。

三浦氏:大きく省力化できる可能性について、非常に興味を持っていただいています。

 アスパラやキュウリの収穫は人手でやる作業が多く、身体的な負荷が高い仕事です。特に真夏の収穫作業は大変です。これをなんとかしたいという声は、農家さんはもちろん、農家を支援している自治体やJAからも聞こえてきています。問題意識も目標も同じであるため、私たちのような小さなベンチャー企業でも同じ目線のパートナーとして見てくださっている方が多く、非常にやりがいを感じています。

 農家さんに対しては、ロボット導入の障壁を低くすることが欠かせません。IT業界では売り切り型モデルからサブスクリプション(定期購買)モデルが主流になりつつありますが、私たちはさらに一歩進めて、RaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)モデルを考案しました。「実際にロボットをサービスのように使っていただき、ロボットが収穫した分に応じて対価を頂きます」というモデルです。もちろんinahoにとってはプレッシャーですが、そこまで踏み込むことで、使っていただいた農家さんと一緒に成長する形にしたいのです。