――逆に人間にしかできないことはありますか。

三浦氏:現状、収穫のスピードに関してはやはり人間の方が速くて、例えばベテランの作業者ですとアスパラ1本当たり3秒から5秒で収穫しますが、ロボットはもっと時間がかかります。現状では1本当たり15秒程度です。

 ただ、収穫ロボットによって「作業をロボットにも任せられる」という選択肢が増えることがメリットだと考えています。今までなら収穫は人手でやるしかなかった。ロボットに収穫を任せれば、その間に出荷作業や営業活動など、ほかの活動に時間を当てて、より高い付加価値創出を目指せるようになります。もちろんinahoではロボットの改良を進めており、収穫のスピードも精度も上がるように進めています。

 また、収穫ロボットが畑を周回することで、人手では難しかった精緻なデータを取得できるようになることもメリットだと考えています。収穫ロボットは各種のセンサーを搭載していますので、どのハウスのどの場所でどのくらい収穫できたかといったデータを蓄積できます。

 あくまで将来の可能性の話ですが、収穫ロボットが収集したデータに、湿度や温度といったハウス内の環境データ、それから肥料や水の適用量といったデータを組み合わせて分析することで、栽培の改善につながるヒントを導き出せるようになると思います。さらには、各所で稼働している収穫ロボットのデータを集約し、そのビッグデータを解析することで、栽培について新しい知見を創出できるかもしれません。ここについては自治体、JA、流通関係の方々にも注目いただいています。

バリバリ技術系である必要はない

――アグリコミュニケーターにはどんな資質やスキルが求められているのでしょうか。

三浦氏:収穫ロボットが新しいものであるだけに、ゼネラリスト的な働き方が求められます。アグリコミュニケーターは現在、私のほかに5人いるのですが、前の職業や出身業界は人それぞれです。農業分野出身の人もいれば、そうではない土木やIT出身の人もいます。私も最初は横浜市役所からキャリアをスタートさせ、プロジェクトマネジメントのコンサルティング企業を経てinahoに加わることになりました。

 私たちには大きく言えば2つの役割があります。営業・マーケティング系の役割と、ロボットを扱う技術系の役割です。主に前者は、様々な関係者とコミュニケーションを取ってパートナーシップを組みながら、ロボットの活躍の場を探るような業務をしています。

 後者はやや技術寄りで、農家さんを訪問してロボットの導入支援をしたり、現場で使って分かったことを開発陣にフィードバックする業務です。技術者出身である必要はありませんが、ソフト・ハードの知識があればやりやすいというニュアンスです。求人サイトで募集をする際には職種像を分かりやすくするために「フィールドロボットエンジニア」という名称を使ったりもしています。

――事前にITや農業の知識が必須というわけではないのですね。

三浦氏:もちろん知識があれば現場のことが理解しやすいですが、後からついてくると言えます。むしろ、誰がどんなことに困っていて、その困りごとに対してどんな価値が提供できるかを考えて提案できるような人が向いていると思います。

――ビジネスパーソンとしての基本動作がしっかりできて、農業に関心がある人に向いている仕事と言えそうですね。